脱着作業で省力化・軽労化
タイヤ整備の現場で今、強く求められているテーマが“省力化・軽労化”。その背景として、タイヤ整備を担当する作業スタッフ不足が深刻化していることが挙げられる。
足廻りサービス機器の専門サプライヤー、東洋精器工業が意欲的に取り組んでいるのがまさに“省力化・軽労化”だ。太田正彦常務取締役は「少人数で仕事を回せるよう軽労化・省力化を実現し、より効率化が可能な機器をご提供すべく、今後10年間を見据えた製品のラインアップ構想に着手した」と語っている。
その第1弾として上市したのが、乗用車用タイヤチェンジャー「PIT ATHLETE-Ⅱ」(ピット・アスリート・ツー)のマイナーチェンジ仕様だ。2019年秋から本格展開を開始した。販売企画部課長製品・技術部門リーダーの小出哲裕さんが、新製品の解説と実演デモを行ってくれた。
「PIT ATHLETE-Ⅱ」は、同社タイヤチェンジャーのスタンダードモデル。精悍さの漂うマットブラックのカラーリングが個性的で、コストパフォーマンスに優れる人気機種だ。市場に投入し3年ほど経つが、今回のマイナーチェンジは機器本体ではなく周辺部分を行ったと、小出さんは言う。
そのマイナーチェンジで大きく進化したのは次の3点。高機能型サポートユニット「AL390」と側面装着型タイヤリフト「SR-69」、ビードのめくり上げをサポートする「レバーレスユニットモデル」を採用したこと。
従来は本体右側に取り付ける「AL320」と、本体左側に取り付ける「AL330」という2種のサポートユニットをオプション品として用意していた。「AL320」「AL330」それぞれのプレスバーとディスクローラー、「AL320」のプレスローラーというダブルプレス機能の働きで、難易度の高いランフラットタイヤや高剛性の超偏平タイヤの作業に対応するものだ。
それをマイナーチェンジでは、本体左側の「AL330」に代えて、本体右側に「AL390」を搭載することで、サポートユニットの配置を本体右側に集中させた。いわばサポートユニットのオールインワン化である。
サポートユニット「AL390」の特徴は、ポジションの固定に際してエアーロック機構を採用した点。押さえたい場所・高さに素早く位置合わせが可能。作業者の意思に対しタイムラグが生じないのが良い。
また、「AL390」にもプレス機能を付加させているので、従来のダブルプレスからトリプルプレスへと進化。小出さんは「組み込み作業に際してビードの浮き上がりが生じてしまうことがあります。その場合、これまでの2点押さえよりも、3点押さえのほうが断然作業がしやすい。ほとんどの作業で力要らずで、ユニットのコントロールレバー操作で作業が完了するくらいのイメージです」と話す。
サポートユニット「AL320」をグレードアップさせた「AL390」を本体右側に配置したことで、本体左側のスペースが空いた。そこに側面装着型タイヤリフト「SR-69」を搭載することが可能となった。床上でビード落とし作業を行い、転がしてリフトに載せるだけ。ターンテーブルの高さに合わせタイヤを倒せば脱着作業の準備が整う。上昇・下降はペダルを踏み任意の高さで停止できる。リフト能力は70kg。
タイヤリフトの採用により、作業の大幅な省力化・軽労化を実現。しかも、サポートユニットを本体右側に集中させたことで、作業者の動線も少なくなった。この点も作業性の向上に貢献する。
また、サポートユニットの収納・展開を考えると、右側に集中したことで左側スペースをコンパクト化することが可能となった。機器レイアウトの自由度が拡がり、限られたピットスペースの有効活用にも寄与する。
さらに、タイヤの脱着作業の中で労力が伴うビードのめくり上げにおいても、同社の「レバーレスユニットモデル」を選択することで、コントロールレバーを上下に操作するだけで力を使うことなくビードをめくり上げることができ、省力化や作業性の付加価値をより一層高めている。
「スタンダードモデルであり、様々な業種で非常に多くの方にお使いいただく機種ですから、誰もが使いやすくなければなりません。レバーレス作業の経験が少ない方でも、その取りかかりとなるのではないでしょうか。タイヤ脱着作業における省力化・軽労化を図ることで、作業効率を向上し、ひいては作業の安全性向上を追求しています」、小出さんはこのように説明する。
サポートユニット「AL390」とリフト「SR-69」「レバーレスユニットモデル」の組合せ仕様が同社の一押し。カスタマイズすることで、「PIT ATHLETE-Ⅱ」はさらなる進化を見せつけた。