東洋精器工業は現在、製品ラインアップを10年という長いスパンで俯瞰した上で最適化し販売展開するという取り組みを進めている。そのときに「鍵となるのがスタンダードモデルだ」と、太田正彦常務取締役は指摘する。スタンダードモデルは技術スキルの高いタイヤ専業店のスタッフだけでなく、SSや量販店といったキャリアの浅いスタッフが使用するケースも非常に多い。
仮に技術スキルにレベル差があるスタッフが作業現場に混在したとしても、作業の仕上がりに格差が生じるようなことがあってはならない。どのような業種であっても、また誰が使用しても使いやすく、作業しやすい。しかもコストパフォーマンスに優れること――スタンダードモデルだからこそ、市場からのニーズはより厳しいものとなる。
同社がこのほど展開を始めた製品ラインアップ構想は、その点を踏まえ、スタンダードモデルの性能充実に力点を置いたものとなっている。2019年秋から販売を開始した乗用車用ホイールバランサーの新製品「TRIM(トリム)BP-67A」はまさにそれを象徴するものと言える。
基本性能を高め測定精度を向上させつつ、優れたコストパフォーマンスを実現した。その新製品の解説と実演デモを、販売企画部課長製品・技術部門リーダーの小出哲裕さんが担当してくれた。
同社では2016年、創業満70周年を迎えたのを機としてホイールバランサーの製品戦略を見直した。それによりこれまで「TRIM」と「PRESTO(プレスト)」、2つのシリーズを上市していたホイールバランサー・ブランドを「TRIM」に一本化。その新「TRIM」シリーズの新製品第1弾として上市したのが「TRIM BP-67/BP-68」の2機種だ。ポジショニングとしては、「BP-67」がスタンダード仕様、「BP-68」はワンランク上のデラックス仕様となる。
今回の「BP-67A」には、デラックス仕様の「BP-68」の一部機能をスタンダード仕様の「BP-67」に追加採用した。それにより作業性を向上させ、バランス精度の向上にも貢献したと、小出さんは話す。
その追加採用した機能とはレーザーライン機能だ。内面修正モード時に、位相を合わせると、ホイール下方に赤い色のレーザーラインが自動的に照射されるもの。そのレーザーの位置をガイドとしてウェイトを貼り付けられるので、作業効率が向上した。
小出さんは「レーザーがないと、作業者の感覚で貼ることになるので、人によっては真下に貼ろうとしても、手前に貼ったり奥に貼ったりすることがあり、なかなか綺麗に貼ることができないケースがありました。そのような人の勘に頼ることがないので、貼り付け作業が容易となり、誰でも同じ位置で正確に修正できます」と、実演しながら解説する。
位相位置のロック方式には「BP-67」を引き継ぎペダルロック方式を採用した。電磁ロックタイプを採用している「BP-68」とは異なる点の一つ。ウェイト取り付け時、修正位置のズレを防止するという、作業性と作業品質の向上に寄与する機能だ。
一方で、リム径・距離自動ユニットをはじめ、ビハインド機能やマッチング機能、LED照明の標準搭載などの先進的な機能は、「BP-68」と共通している。
また、測定作業中に作業ウェアの巻き込み防止や石ハネからの被害を防ぐためのタイヤガードと、タイヤガードを上げると自動で停止し下げると自動で運転を行うカバースタート機能は、同社のホイールバランサーではすべて標準装備としている。作業の安全性はすべてに優先するという同社の哲学が具現化されたものだ。
カラーリングは高級感の漂うマットブラック塗装を採用。乗用車用タイヤチェンジャー「PIT ATHLETE-Ⅱ」で取り入れ市場で高い評価を得ており、「TRIM BP-67/BP-68」でも採用したもの。今回の「TRIM BP-67A」もそれを継承した。
小出さんは「スタンダードモデルに上位機種に採用される高機能を付加しながら、すぐれたコストパフォーマンスを実現しました。ピットに映えるルックスも高い付加価値だと言えます」と、新製品の機能に強い自信を示している。