タイヤ整備機器の開発において、エイワが意欲的に取り組んでいるテーマが“技術の可視化”だ。「見る人に直感的に技術力の高さを訴求することで、それがお店の付加価値の向上に繋がる」と、前中社長はその意図を説明する。
タイヤチェンジャーと出張サービスカーが16年度グッドデザイン賞を受賞したのに続き、ホイールバランサーでも18年度の同賞を受賞した。それもこれまでの取り組みが実を結んだ証と言える。
そのエイワがこのほど、乗用車用タイヤチェンジャーの新製品を上市した。「WING CL-121A」だ。これは18年に発表した「WING CL-121」のマイナーチェンジ仕様。使い慣れたヨーロピアンタイプのフォルムはそのままに、センターロック方式を採用したタイヤチェンジャーのハイエンドモデルだ。商品部部長の杉村幸二さんがデモ操作と技術解説を担当してくれた。
「WING CL-121A」は「プレミアム WING」シリーズの流れを汲むレバーレス作業対応機。シリーズに共通する、深い質感のグレーをベース色に落ち着いたブラックをアクセントとして配した高級感あふれるカラーリングを継承した。
タイヤ脱着作業に関わる主な機能も「WING CL-121」を踏襲している。ホイールのセットにはセンターロック方式を採用。ホイールの本体への取付け(従来のチャッキング作業)が容易で、ワンタッチでセットが可能なスマートロックシステム(特許取得)を搭載した。ビード落とし作業はホイール固定の後に行うため、中腰作業がなく作業者の労力を軽減。樹脂ディスクによる作業でタイヤ・ホイールの損傷防止にも繋がる。ロック用コーンには樹脂カバーと樹脂コーンを用意し、ホイールへの傷付け防止を図った。リバースホイール対応キットなどオプション品も豊富に用意したという。
支柱にはパラレル・リジット構造を採用しており、これも特許取得技術。堅牢な支柱構造で高い剛性を実現し、安全・安心な作業環境を提供するものだ。
また、エイワ独自のレバーレスシステム、QXプラス(特許取得)を採用。超偏平タイヤやランフラットタイヤなど高剛性タイヤの作業時はレバーレスで、一般タイヤはレバーで作業するという、2通りでの使い分けができる。しかもレバーレス作業とレバー作業の切り替えはワンタッチで可能だ。
組み込み作業時にはプレス装置であるBP1-PLUSがビードをプレス。収納位置になるとアームが自動で上昇し収納される自動収納機構を採用。さらにディスクツールにはタイヤへの負荷を考慮し、組み込みやすい形状と角度を設定したセンター・ドリブンシステムを採用した。これらも特許取得技術だ。
一方、「WING CL-121A」で進化した機能は、ツインエアー充てんシステムを搭載したこと。自動充てん式チャージャー「PASCAL 5」(パスカル・ファイブ)と手動充てんユニットの2つのエアー充てんユニットをシステム化した。
従来はフットペダルの操作でエアーを注入するアナログメーター表示の手動充てんユニットのみだった。今回、それに加えマイコン制御式の自動充てん式チャージャー「PASCAL 5」を搭載したことでマイコン制御による自動充てん作業が可能となった。
「エアー圧を設定後、自動で充てん作業ができるので、作業中はタイヤから離れた場所へ待避することが可能です。マイコン制御により過充てんなども未然に防ぐことができますので、事故のリスクを減らすことに繋がります」と杉村さん。「自動充てんとマニュアル充てんを、そのときのタイヤ・ホイールに応じて使い分けることで、より安全で的確なエアー充てん作業を行うことができるようになります」、このように続ける。
エアー充てんユニットには有線による緊急停止ボタンを採用した。最大で10m離れた位置に設置できるので、万一のトラブルによる事故を回避することが可能だ。
杉村さんは「タイヤ交換はこれまでの場合、機器と人力を駆使する作業と言う意味合いが強かったように思います。ですが、『WING CL-121A』などハイエンドモデルの場合、作業者は機器を操作するオペレーターと呼べるのではないでしょうか」とする。今後も作業品質を高め操作性に優れる、“技術の可視化”を具現化する製品の開発に取り組んでいくと話している。