日本自動車タイヤ協会の調べによると、車両からタイヤを取り外した状態で行う「タイヤ空気充てん作業時」の事故は2018年1年間で33件発生。車両にタイヤが取り付けられた状態で行う「タイヤ空気補充時」の事故も2件あった。また今回の調査で、作業の経験年数が10年以上のベテラン者であっても21件もの事故に遭遇していることが判明した。慣れによって慢心が生じ標準作業から逸脱してしまうということが事故の隠れた要因にあるかもしれない。
さらに指摘されるのが深刻化する人手不足の問題。作業速度を優先するあまり、安全を軽視しかねない土壌を作ってはいないだろうか。タイヤ空気充てん作業の特別教育に則った標準作業を励行することが求められる。
タイヤ空気充てん作業を効率的に、かつ正確に行いつつ、安全を担保する整備機器が空気充てん機だ。東洋精器工業（兵庫県宝塚市、阿瀬正浩社長）では、多機能型自動エアー充てん機「AIRMATE」（エアーメイト）シリーズを展開中。このほどその新製品として「AIRMATE TM200」と「AIRMATE TM300」「AIRMATE TM500」を開発した。今春から本格販売を開始する。
販売企画部課長製品・技術部門リーダーの小出哲裕さんは「ガソリンスタンド（SS）でタイヤの空気補充用として使われているのをよく見掛けると思いますが、『AIRMATE TM200』はそのタイプです」と紹介する。
その特徴は機器自体が非常にシンプルであること。「操作パネルには電源のオン・オフを行うボタンと、空気圧を設定するためのプラス・マイナスのボタンを配置するのみとしました」と、小出さんは続ける。
SSはセルフ化が進み、給油の間にスタッフが空気圧を点検しエアーを補充してくれるというフルサービス店は減少の一途を辿る。セルフSS店でドライバーが自らダイヤル式インフレーターでタイヤへの空気充てんを試みるものの使い方がわからず断念した、というエピソードを時に聞く。
この「AIRMATE TM200」はスタンド部分に操作手順をイラスト化したマニュアルを貼付した。バルブからのエアー漏れやバルブキャップの付け忘れ防止のためのコーション表示も併せて貼付している。また設定空気圧への充てん終了を知らせるブザーも音量を大きめに設定した。高齢者への配慮である。
さらに、規定の空気圧の半分に満たない状態のタイヤの場合、エラー表示とブザー音を発し、作動しないという安全機能を備えている。これはパンクの恐れがあるタイヤにそのまま空気を充てんしてしまわないよう、危険を回避するものだ。
「AIRMATE TM200」はスタンド式設置タイプ。機器本体は防水仕様なので、SSに限らず店頭の入り口など屋外で備え付けし、タイヤ空気圧チェックに活用することも可能だ。
「タイヤ空気圧不足のクルマは減るどころか増加傾向にあるという事実があります。タイヤ空気圧の日常管理がいかに重要か、その認識を高めていただきたいということ。さらに充てん機の使い方がわからなかったり、その使い方が面倒だったりしますと、せっかく空気圧を点検しても正常な空気圧を保つことがなされません。それをどうにかできないだろうかという点から開発をスタートしました」、このように小出さんは新製品のコンセプトを説明する。
一方、「AIRMATE TM300」「AIRMATE TM500」は、従来モデル「AIRMATE TM150」を改良した新製品。規定空気圧に対し指定した圧力分、空気圧を過充てんし、その後に規定空気圧まで減圧することで、より確実なビードシーティングを実現する「ビードシート機能」を搭載。また窒素ガスを充てんする「N2モード」、空気充てん後に安全確保のため任意に設定した時間まで放置した後に充てん完了をブザー音で知らせる「待機時間設定機能」など、各機能は従来モデルを継承した。
「パネルを大きくし、ボタンをより使いやすいよう配置することで操作性を高めました。また油分や水分への耐性をアップさせ故障しにくくし耐久性を向上しました」と小出さんは説明する。
作業の緊急停止と内圧の自動排出を離れた場所から瞬時に作動させることが可能な「リモコン」は、「AIRMATE TM300」に搭載していない。「リモコンモジュール」を付属させ安全性に特化した製品は「AIRMATE TM500」となる。なお「AIRMATE TM300」「AIRMATE TM500」はスタンド型、壁掛け型、安全ケージ搭載型としても設置可能。出張サービスカーでの使用にも対応する。
「AIRMATE TM200」「AIRMATE TM300」「AIRMATE TM500」は作業効率の向上・省力化と作業の安全を両立する空気充てん機だ。