横浜ゴムは、今年1月から国内でオールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21」(ブルーアース・フォーエス・エーダブリュー・ニーイチ)を発売開始した。2月3日には北海道旭川市内のホテルで、“雪に強いオールシーズンタイヤ”というコンセプトを掲げた同商品の技術説明を行った。
氷雪性能を向上させる要素の一つは「エッジ」だ。これは「雪柱せん断力」と「エッジ効果」を高めるもので、前者は溝で踏み固めた雪の柱を排出する時の力、後者は溝・サイプのエッジが雪や氷を引っかく力を指す。また「接地」の確保、つまりゴム表面が路面と密着して生まれる「凝着摩擦力」もポイントだ。
「BluEarth-4S AW21」は、「エッジと接地のバランスを追究するため、パターンに様々な検討を重ねてきた」(タイヤ第一設計部設計2Gの森将一氏)という。
まず、エッジ量と各種性能の関係を分析したところ、スノーに関しては、エッジを増やすほど雪柱せん断力が向上して性能も向上。だが、ドライはエッジの増加で接地が減少して性能悪化につながる。また、ウェットはエッジが少ないと性能が出ず、多すぎても接地が減少して悪化するため、適値が求められる。
これらの評価から、オールシーズンタイヤに適したエッジ量の領域を推定。そこから“雪に強い”というコンセプトのもと、スノー寄りのバランスでエッジ量を決定した。
専用開発したパターンには、V字ダイバージェントグルーブや、V字とV字の間にクロスグルーブを配置して優れた排雪・排水性を目指した。また、3Dサイプや大型ショルダーブロックがブロック剛性を確保し、ドライ性能も両立する。
コンパウンドは末端変性ポリマーを配合してシリカ分散を向上させ、雪上・ウェット性能に貢献するゴムのしなやかさを維持。スノーとウェットに効くそれぞれのポリマーやウェット性能に寄与するマイクロシリカもバランスよく適用した。
2月4日には、同社の「北海道タイヤテストセンター」(=TTCH、旭川市)でトヨタ「プリウス」を使って試乗会を実施。屋内氷盤路で時速20kmから制動距離を確かめたところ、「BluEarth-4S AW21」は12mほど。比較試乗したスタッドレスタイヤ「iceGUARD6」(アイスガード・シックス)が約7mだったことから、やはり凍結路面ではスタッドレスがベストだろう。
一方で、屋外の圧雪路に設けたスラロームでは、「BluEarth-4S AW21」でも時速20km程度なら全く問題なく走行できた。もちろん直進走行からのブレーキ操作も安心だ。時速30kmほどだと若干滑ってしまうこともあったが、対処しながら運転できる程度だった。
また、オールシーズンタイヤはスタッドレスよりエッジ量が少ないため、舵角を意識することもポイントだという。森氏は「小舵角域で切って頂ければスタッドレスとの横力の差が少ないので、オールシーズンでもスタッドレスのように曲がる」と説明する。
ユーザーがオールシーズンタイヤの雪上性能に抱く疑問に応えるため、スノー性能を強化して開発した「BluEarth-4S AW21」――14~19インチの19サイズを展開し、ニーズがあれば欧州で発売する別サイズの追加も検討するという。