新型コロナウイルスの感染拡大によりさまざまなところへ影響が出ている。企業でテレワークへのシフトが進み、それにともないECを通じての商品購入が増加。生活者の消費行動にも大きな変化が生じている。輸送物流業界では荷物の受発注が急増し配送トラックの稼働が増加する一方で、トラックドライバーは慢性的な人手不足の状況が続くままだ。このようなことを背景として、輸送業界では車両管理・メンテナンスにかかる時間や人員をいかに減らすかということに注力し取り組んでいる。それをタイヤ整備作業の現場で言い換えると、効率化(イコール、作業時間の短縮)と、省力化・軽労化(イコール、省人化)へのニーズとなる。それへの取り組みこそ喫緊の課題だ。
東洋精器工業(兵庫県宝塚市、阿瀬正浩社長)では、このような現場のニーズにタイムリーに対応するため、新たな構想に基づく製品ラインアップを行っているさなかだ。
その同社はこのほど、作業の効率化と省力化・軽労化に寄与する新製品を上市した。汎用タイヤリフト「SR-66」がそれだ。販売企画部製品・技術部門課長代理の森本祐二さんが取材に対応してくれた。
一般的なタイヤチェンジャーを使用し作業するときに、作業者に大きな負担がかかるのが、ホイールが付いたままのタイヤをターンテーブルにセッティングする場面だ。ホイールに爪をチャッキングさせる段取りで、作業者は足を踏ん張りながら腰を入れ腕に力を込めてタイヤを持ち抱える。多くの作業者が腰痛に悩むのは、このような作業を毎日、不断で行うからだ。職業病の要因と指摘される。
「最近ではリフトアップ機能を標準装着するタイヤチェンジャーや、その機器専用に製作されたオプション品のタイヤリフトも出回り始めています。それでもタイヤリフトを備えたタイヤチェンジャーはまだ多くはないのが現状」(森本さん)のようだ。
そこで同社は、既にお使いのタイヤチェンジャーに後付けで簡単に設置し使用することが可能なタイヤリフト「SR-66」を開発した。動力源はエアーのみ。タイヤチェンジャーのエアー配管に割り込ませるだけでアンカー固定しなくてもリフトが不安定になること無くすぐに使用できることから、単独で供給エアーが接続できれば複数のチェンジャーで兼用することも可能。
森本さんは「『SR―66』はリフト高をテーブル高より50ミリ以上高く設計しています」と指し示す。この高さが趣向を凝らした点である。それは即ち、タイヤを水平にリフトアップした時点でのリフト揚程高が、チェンジャーのターンテーブルよりも高くなるということ。
「リフト高が高い位置にあるので、リフトアップした後にタイヤをさらに持ち上げるという作業が不要となり、力を入れなくてもその高さから横へとスライドさせターンテーブルへと降ろすことができるようになります」、そう解説する。
開発にあたっては、同社の旧モデルも含めたタイヤチェンジャー「PIT」(ピット)シリーズなどを丹念に調査したそうだ。たとえば、「ATHLETE―Ⅱ」(アスリート・ツー)のターンテーブル高はリフト高より50ミリ程度低い。「GLシリーズ」のそれは70ミリ~100ミリという具合に。テーブル高よりチャック爪位置が高いことも考慮に加えた上でだ。
また自社製品以外でも、流通しているほとんどの製品がリフト高以下ということも設計段階で確認した。従って「SR-66」は汎用性に優れ、ほとんどのタイヤチェンジャーにペアリングすることが可能だ。
リフトの操作も至って簡単だ。タイヤを転がしリフト本体に乗せる。このときタイヤは垂直状態。ペダル操作でタイヤを上昇させる。頂点に達しチェンジャーにセットする際に、タイヤは水平状態となる。ローラーの機能でタイヤをそのまま移動させ、ターンテーブル上に置きホイールのチャッキング作業を行う。
森本さんは「『GLシリーズ』のリフティングアームや、『ATHLETE-Ⅱ』のリフトである『SR-69』などは、リフトアップ・リフトダウン作業時にタイヤを寝かせたり起こしたりする過程や労力も要しますが、新製品『SR―66』はただペダルを踏むだけの作業で、寝かせたり起こしたりする必要はありません。非常に使いやすいと思います」と説明する。
タイヤの脱着作業でいちばんの腰痛発症要因を取り除くべく、作業の効率化と省力化・軽労化を図った新製品。リフト能力は70kg。軽自動車から乗用車・SUVクラスまで、幅広い範囲で使うことができるとしている。