「誰もが同じ作業品質を実現できる機器、標準化がすすめやすい機器の需要が高まりをみせる。また身体への負担を減らし抵抗力が損なわれることを防ぐ、そんな人の力に頼らない機器へのニーズも高まってきている」――“with(ウィズ)コロナ”という現在、タイヤ整備機器に求められるニーズの変化について、エイワ(兵庫県西宮市)の前中勝彦社長はこう分析する。このようなことを背景に、同社がこのほど上市した乗用車用タイヤチェンジャーの新製品が「WING iR24」だ。
商品部部長の杉村幸二さんによるとミドルクラスのモデルに位置付けられ、タイヤ交換作業の頻度が高いSSやRS、プロショップの2台目としてうってつけだという。
「WING iR24」がまず目指したのは安全性の向上。そのために機器本体がいかに堅牢であるか。杉村さんは「ボディ設計を1から見直しました」という。「部位ごとの剛性だけではなくボディ全体のバランスも見直すことでボディ強度を大幅にアップしています」と説明する。
特に支柱については、そのロック機構に第3のロックシリンダーを追加したことが大きな特徴だ。「タイヤ交換作業時、水平軸に対し横方向の負荷が大きくかかります。機器を長年ご使用頂くと、その水平軸に摩耗などの劣化が起こることがあります。横方向への負荷を抑えると同時に、水平軸の不要な動きを抑えるため、従来からの縦軸・水平軸のロックシリンダーに加え、今回新たに採用したのが第3のロックシリンダーなのです」、杉村さんはそう続ける。
新製品の支柱に採用した『トリプルロックシステム』とは第3のロックシリンダーを含む3つのロック機構の総称だ。新構造の支柱と組み合わせることで高い剛性を実現した。
安全性の向上を目指し採用したもう1つの新機構が『ダブルフランジシステム』。これはチャッキング時、クランプ爪を作動させるフランジ(連結アーム)を1本のシングルアームではなく2本のダブルアームにしたもの。
同社のプレミアムチェンジャー「WING PFZ265/PFZ245」には特許技術『プレミアム4シリンダー』を採用している。これはターンテーブルに独立した4本のシリンダーを搭載し、その4本のシリンダーをクランプに直結させることにより均一かつパワフルなチャッキングを実現するもの。ホイールへの力が均等にかかり稼働時のタイムラグも発生しないので、ワンストロークチャッキングの作業性と合わせて4シリンダーを杉村さんは“理想的なチャッキング方式”と説明する。
『ダブルフランジシステム』は、最高級機の「PFZ」シリーズに搭載されている『プレミアム4シリンダー』に非常に近い効果を得られる機能として「iR24」に採用した。杉村さんはそれを「『バーチャル4シリンダー』システムと言うことができます」と表現する。「シングルアームと比較すると動きがよりスムーズになりました。ダブルアーム化したことで4つのクランプ爪が4シリンダーシステムに近い均等の力で確実にチャッキングします」、こう解説する。
作業性の向上については、レバーレス機能『QXレバーレスシステム』をさらに進化させた『QX PLUS』も搭載可能とした(オプション)。
『QX』では、タイヤレバーを使用する場合、クイック交換キットを使いMDヘッドを装・脱着する必要があった。
しかし、『QX PLUS』ではそのひと手間を省いた。レバーのモードをワンタッチで切り替えることによってレバーレスシステムとMDヘッドを交換せず、専用タイヤレバーでの作業を行うことが可能となった。一般のタイヤも、ビード起こし作業の難易度が高い超偏平タイヤやランフラットタイヤも、効率を損なうことなく高い品質の作業を実現する。もちろん、従来の『QX』を搭載することも可能だ。
さらに、サポートアームとして、ランフラットタイヤやスピーディーな作業に最適な4サポートモデルの『HELPER-R(2サポート)/HELPER-L(2サポート)』、省スペースを実現する3サポートモデルの『HP3』をオプションでラインアップしている。今回新たに、機器本体左側に『HELPER-L』、右側に『HP3』を配置することで5サポートモデルも実現。5つのサポートを使って多ポイントの押さえ込みで確実に作業することで、人の力に頼らず安全に、脱着作業を行うことが可能だ。
「WING iR24」の対応リムは標準仕様で12~24インチの設定。しかし10~22インチの22インチ仕様の設定も用意した。レンジは出荷時で選択できる。標準仕様は大口径・超偏平タイヤの作業が多いプロショップ、22インチ仕様は軽自動車やコンパクトカーなどのユーザーが多く訪れるSSやRS向けだとしている。ターンテーブルの回転もペダル踏み込みによる『ペダル2スピード』を採用した(SS向け防爆仕様は1スピード)。
「『WING iR24』は堅牢なボディ構造とワイドな作業レンジを誇ります。安全性と作業性を追求し、誰もが使いやすく、高い作業品質を実現する機器として開発しました」と、杉村さんはその性能を強くアピールしている。