イヤサカはこのほど、米HUNTER(ハンター)製の大型車用ホイールバランサー「フォースマッチHD/GSP9620HD」の販売を開始した。営業企画部長の飯田正弘氏が「今までのバランサーにはない機能を提供することが一番の狙い」と話す新商品の採用技術や、そのメリットを紹介してもらった。
新商品の特徴は、タイヤのハイスポットを検出するロードローラーが備わったことだ。営業技術部技術一課の神尾尚哉氏は「タイヤはどうしても硬いスポットがあったり、真円ではなかったりする。それらをローラーで測定し、ホイールとのベストな組み合わせを検知する」と説明する。これまで国内では、大型車向けにこうした機能は展開されていなかったという。
まず、回転するタイヤにロードローラーが接触し、ハイスポットを測定。その次に、バランサーのアームをホイールのイン側・アウト側にそれぞれ当てながらタイヤを回転させ、ホイールの振れを検出する。
タイヤの最も硬いスポットとホイールの一番振れが大きい部分を診断した結果は、フードの上部に設置されたHammerHead(ハンマーヘッド)からレーザーでそれぞれ照射される。各ポイントに印を付け、タイヤチェンジャーで位相合わせを行うことで、タイヤに起因する振動を修復することが可能だ。
一般的なバランス修正でもタイヤが空中で回転しているときの振れは治まる。ただ実際に走行すると、ウエイトでは変えられないタイヤやホイールそのものの影響が表れてしまう。そこで「フォースマッチHD」では、“大本を直してから、細かいアンバランスを修正する”という考え方を取り入れたのだ。
神尾氏は「大型車は『振動して当たり前』『振動は車両側で吸収する』といったイメージや認識があるが、それでもやはり長時間運転するので振動を極力減らしたいというニーズがある」と話す。
また、これらの診断は再生タイヤにも有効だという。飯田部長は「台タイヤの上にゴムが貼り付けられるため、再生タイヤは跳ね返りなどが生じることもある。ただ、これまでのバランサーはアンバランスしか見ることができなかったが、『フォースマッチHD』ではそれ以上の診断を行え、乗り心地を一番良い状態に持っていくことができる」と自信を示す。
タイヤとホイールの最適な組み合わせは、快適性の向上だけではなく偏摩耗の抑制にも寄与するため、タイヤの長寿命化も期待できる。
「フォースマッチHD」は、バランス修正の場面でも精度や生産性の向上、コストの削減につながる機能を盛り込んだ。
227kgまでのタイヤを簡単に持ち上げられるホイールリフトシステムを利用し、本体にタイヤをセット。ホイールのリム径・リム幅はアームを使って自動で入力し、アームの当てる位置によって打ち込みモードと貼り付けモードが切り替わる仕組みだ。作業者がゲージで計測したり、アルミもしくはスチールなのかを選択したりする必要はない。
バランスの診断結果が明らかになった後、ボタンを押すと、貼り付けモードでは作業部分が6時の位置に来るようタイヤが回転する。ウエイトの貼り付け位置はレーザーで照射し、時間短縮や正確性の向上を図った。
「フォースマッチHD」のバランス修正には、スマートウエイト機能を採用した。バランス修正を0kgまで追い込むのではなく、ドライバーが体感できるかどうかのレベルを基準にすることで、ウエイトの使用量を3~4割ほど削減するものだ。
神尾氏は「1本あたりだと削減量は微々たるものに感じるかもしれないが、トラックの場合は10本前後のタイヤを装着するため、トータルで比較するとウエイトの差がかなり出てくる」と紹介する。
また、「タイヤ交換時にバランスを見ることは当たり前になっているので、バランス修正だけで収益を得ることは難しい。そのため、スマートウエイトで少しでもコストを抑えてサービスを提供できるメリットは大きい」と話す。
そのほか、センタリングチェック機能は、タイヤの取り付け時に生じ得るヒューマンエラーを防止。さらに、ウエイト取り付け位置精度が512ポジションあり、正確なバランス修正作業を実現する。このポジション数は製品によって異なるが、「これほど細かく分割しているのはハンター社くらい」(神尾氏)という。また、標準装備のプリンターでサービスレポートを印刷すれば、顧客の目に見える形で結果説明を行うことも可能だ。
「大型車は自動ブレーキなど様々な機能が付いており、それらを整備していくためには精度が確かなアライメントや足回りの機器を提供していかなければならない」(飯田部長)という考えのもと、国内市場に導入された「フォースマッチHD」 車両の進化に合わせて整備の方法や対象が変わっていく中、作業者のニーズやドライバーの期待に応える新型のバランサーに注目だ。