世界初“ボール型”TPMS「AirBall TB」誕生――そのメリットを探る

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カテゴリー: レポート, 整備機器

 バスク(埼玉県志木市、小笠原孝嗣社長)は、トラック・バス用TPMS(タイヤ空気圧管理システム)の新モデル「AirBall TB」(エアボールティービー)を4月3日から発売した。新製品は「ボール形状」のTPMSセンサーを採用し、従来のTPMSとは一線を画するユニークなコンセプトで誕生した。そのメリットや特徴を小笠原社長に解説してもらった。

従来タイプの課題を解決 取り付け作業が実質不要に

「AirBall-TB」のセンサー。直径は36mm、重量は34グラム
「AirBall-TB」のセンサー。直径は36mm、重量は34グラム

 新製品「AirBall TB」は世界初となる「ボール形状」のTPMSセンサーを採用していることが特徴。一般的なTPMSはタイヤ1本ごとにホイール内側にセンサーをバンドで固定する必要があるため、装着に手間がかかり、顧客にとっても取り付け費用が負担となっていたという。

 一方、「AirBall TB」はボール型のセンサーをタイヤの内部に「投げ入れるだけ」で短時間かつ簡易に作業が完了する。小笠原社長は「従来タイプでは1本あたり数千円必要となる取り付け工賃が実質的に不要になる」とそのメリットを説明している。

「AirBall TB」
「AirBall TB」

 乗用車では空気圧不足に起因するタイヤのトラブル件数はここ数年増加傾向が続いており、JAF(日本自動車連盟)のロードサービス件数に占める割合も年々拡大している。空気圧が不適正のまま走行すれば燃費に悪影響を与えることは当然ながら、そのままの状態で放置すればパンクやバーストの原因となり重大事故につながる可能性もある。それを未然に防ぐため、タイヤの空気圧や温度の変化をリアルタイムで監視して異常が発生すれば即時ドライバーに警告するのがTPMSの役割だ。

センサーをタイヤの内部に投げ入れるだけで作業は完了する
センサーをタイヤの内部に投げ入れるだけで作業は完了する

 同社は以前より国内市場でTPMS「AirSafe」シリーズを展開し、これまで乗用車向けの「AS-CV2」(アルミホイール用、クランプインタイプ)、「AS-SV2」(スチール・アルミホイール用、スナップインタイプ)を発売している。そこに今回新しくラインアップされたのがトラック・バス用モデルとなる。

 小笠原社長は「特にトラックでは荷主の依頼を受けて運行するため、タイヤトラブルによる運行ロスは大変ネガティブな問題に発展する要因にもなる」と指摘する。

 こうした潜在需要がある中、現実にはセンサー取り付け工事の煩雑さや価格が障壁となって「導入しにくい」という声が多く聞かれたため、取り付けが簡単なボールタイプセンサーの製品化に注力してきた。

 「トラックやバスはタイヤの本数も多い。取り付けの手間が無くなることは大きなメリットになるので、少しでも早く世に出したい」とメーカーと二人三脚で開発を進め、多数の運送会社でのモニター運用の協力を得ながら耐久性や精度、使い勝手を向上して本格販売にこぎつけた。

視認性と操作性に優れたモニター
視認性と操作性に優れたモニター

 「AirBall TB」の基本構成はボール型センサー6個、5インチTFTモニター、モニタースタンド、受信中継機、電源ケーブルとなっている。

 センサーの直径は36mm、重量は34グラム。モニターや中継器とはBluetooth(2.4GHz帯)で通信を行う仕組みだ。内蔵電池の寿命は1日12時間使用した場合、約3年。寿命を終えたタイミングで、新しくボールセンサーを単体で購入することでモニターなどは継続して使用でき、タイヤの情報も引き継ぐことが可能。また、センサーをタイヤの本数分追加で組み合わせて運用することにより、大型車など最大22輪まで同時に管理することができる。一方で小型トラックユーザーには中継機なしの6輪車専用パックも用意している。

バスクの小笠原社長
バスクの小笠原社長

 モニターにはセンサーごとに割り振られた個別IDを書き換え可能なセッティング機能を内蔵したほか、適正値の場合は青、異常値の場合に赤に変わるなど視認性や操作性を高めている。

 各種電気配線作業やセッティング作業は必要になるが、センサー自体はタイヤのビード部を下げて文字通り「投げ込むだけ」で完了する。実際、ある国内タイヤメーカー向けにデモンストレーションを行ったところ、「本当にこれだけで済むのか」と驚きの声が聞かれたという。

 ボールタイプセンサーの「取り付け作業がなくなる」というメリットは欧米などでも関心は高まっているそうだ。さらに、バルブに取り付けたり、リムに巻き付けたりする従来タイプでは装着状態が悪ければホイールが損傷してしまうといったリスクもある。ボールタイプではそれらを回避できるといった利点があり、「トラック・バス向けでは今後このボールタイプが主流になっていく可能性はある」(小笠原社長)と将来を展望する。

 タイヤの異常に気付かずパンクやバーストなど大きなトラブルに発展する前に警告を発し、ドライバーや顧客の安全を確保する。さらに、運行前点検でタイヤ空気圧点検にかかる時間と人件費の削減、燃費改善によるコスト効果など多くのメリットが期待できるTPMS。その中で、発想の転換により、これまでの標準的な「固定しなければいけないTPMSセンサー」とは一線を画したボール形状で、タイヤ内で自由に転動しながら機能を果たす「AirBall TB」は、その手軽さと高い効率性で業界の注目を集めていきそうだ。


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