エイワ(兵庫県西宮市、前中勝彦社長)は5月にホイールバランサーの新製品「CIRCUIT(サーキット)CF15」を発売した。新製品は、ユーザーの使いやすさを意識したデザインと作業の効率化や省力化につながる機能を搭載しながら価格を抑えた汎用モデル。バランス測定の専門メーカーによる高精度センサーを採用し、作業の正確性を向上しつつ測定時間を短縮している点にも注目だ。同社営業部の松葉久典広域部長と横浜支店の上原健司支店長にデモンストレーションを交えながら主な特徴を解説してもらった。
「サーキットCF15」は2017年に発売した「サーキットCF12」を約4年ぶりにモデルチェンジしたホイールバランサー。ガソリンスタンドや自動車の整備工場、カーディーラーやタイヤ専業店の2台目など幅広いユーザーをターゲットにしている。新製品の大きな特徴の一つは“ERGO(エルゴ)デザイン”を採用したことだ。このデザインは、機器と人の関係に着目して人間が使う形を意図した機器の造形表現を指しており、オペレーターが「使いやすい」と感じられる構造を目指している。
新製品では、ホイールをセットする主軸の位置を作業者に近い手前側に設置することで、自然な姿勢で作業できる設計を施した。これにより、中腰になりにくく、労力が確実に軽減されるという。
松葉氏は「様々な機能を付加して労力を軽減することもできるが、それに加えてデザインを工夫することにより、省力化を実現しているのがポイント」と説明した。
さらに、高いバランシング技術を持つ伊CEMB(チェンブ)社がOEM製造しており、高精度な測定が可能となっている。チェンブ社は回転する物体のバランスを取る測定器の世界ナンバー1メーカーであり、「CF15」に搭載したセンサーは専門性の高さに裏打ちされた高い品質を持つ。
測定システムにはVDD(ヴァーチャル・ダイレクト・ドライブ)システムを採用することで測定時間が従来品より40%も短縮した。このシステムは、モーターの回転信号をロスなく受け取り、位相検出や演算処理を行うもの。乗用車のタイヤ・ホイールであれば5秒程度で測定が完了するという。
松葉氏によると、一般的なバランサーの測定時間は10秒ほどとのことだが、その約半分の時間で測定が終わる計算だ。作業時間の短縮に寄与しながら、高い精度を保っているのはチェンブ社の技術によるものだ。
さらに、測定時の回転スピードが100rpmとゆっくりしているため高速回転による軸への負担が少なくなる上に、安全性も向上するメリットがある。これにより、測定精度を長く保ちつつ、長期間使える機材となっている。
「CF15」は新たにウェイト修正位置のレーザー照射機能を搭載した。この機能は上級モデルの「サーキット 7425Air(エアー)」で採用しユーザーから好評だったもので、貼り付け位置をレーザーラインで分かりやすく示すことでウェイト貼り付け作業の正確性を高めることが可能。貼り付け位置も下側で指示することで視認性と作業性を高めた。
また、ディスタンスとリム径のデータを自動で入力することもでき、作業性は一層向上している。アルミホイールの内面修正はIN(イン)とOUT(アウト)の修正位置にゲージを当てるだけの2アクションでデータ入力が完了する。
あわせて、修正位置で主軸がロックする電磁ブレーキ機能も装備しており、ウェイトを貼る際の位置確認や正確な取り付け作業をしっかりとサポートできる。
さらに、オプションパーツとしてタイヤリフトやホイールガード、WD用コーン、LT用コーン、MC用アダプターなど多数を用意しており、作業の幅をより一層広げることも可能だ。
オプションの中でも、「タイヤリフトは省力化や軽労化、効率化、作業の標準化に加え、測定精度の向上にも寄与する」と上原氏は説明する。近年はタイヤの大径化が進み、タイヤとホイールのセット重量は増加傾向にある。主軸への取り付けの際に、主軸とハブ穴の中心がずれた状態の偏芯取り付けを起こしてしまうことが少なくない。
偏芯した状態で固定してしまうと、測定精度が低下してしまうリスクがある。一方でリフトを使用することで、作業者に負担を掛けずに、正確な取り付け位置にホイールを固定することができるという。
上原氏は「作業者の労力軽減に加え、測定精度の維持のためにも有効なツール」とした上で、「『CF15』は基本性能を向上させたモデルであるが、タイヤリフトを併用することでさらなる付加価値がプラスできる」と自信を示す。
「CF15」の機能は上位機種とほぼ同等であり、違いはホイールの固定がハンドルロックである点のみだという。一方、価格は従来品の「CF12」とほぼ同水準に抑えた。開発にあたっては修理や営業などで、整備現場で働く顧客とコミュニケーションを図りながらニーズを集約することで、求められる機能を追求して製品化にこぎつけた。コンパクトで多機能な「汎用モデルの集大成」として幅広く訴求していく考えだ。