ハンコックタイヤジャパンは9月から乗用車用スタッドレスタイヤ新商品「Winter i*Cept iZ 2A」(ウィンター・アイセプト・アイジー・ツーエー)を発売した。ハンコックが国内でスタッドレスの開発を始めてから約15年。新商品は“日本の厳しい冬の雪道でも、より安全にドライビングの楽しさを提供する”というコンセプトのもとに開発された4代目のモデルとなる。今年2月下旬に北海道で行われた試乗会でその性能を体感した。
ハンコックのスタッドレス史上初めて「非対称パターン」採用
新商品「Winter i*Cept iZ 2A」の最大のポイントは、冬道の快適な走行を実現するための「非対称パターン」の採用だ。アウト側はゴムの面積を拡大させ、イン側には溝の面積を広くと、それぞれに役割を持たせることで確実なトラクションを発揮することを目指した。
さらに同社の説明によれば、ハンコックのスタッドレスタイヤとして初の非対称となったトレッドには、数々の技術が新たに搭載されていることが分かる。
ピッチ数は従来品(Winter i*Cept iZ)と比較して30%増加させたほか、エッジ効果を向上させることでアイス路面のグリップ力を高めた。またブロックの剛性を上げることでアイスブレーキング性能も向上している。
「縦方向に新しい技術を取り入れ、ブレーキング性能、トラクション性能、それぞれの役割分担のためのサイピングを配列している」(同社)としている。
今回、主溝には2本のストレートグルーブを適用したほか、ハイドロプレーニング現象の発生を抑制するグルーブを採用。これは「スタッドレスタイヤは降雪シーズンが終わった後もしばらくは装着し続けるユーザーが多い」という市場ニーズに合わせたもの。ウェットでのグリップ力を高め、ブレーキング性能とハンドリング性能を向上させている。
一方、コンパウンドには粒子を従来より細かくしたシリカを均一に分散配置した。これにより、低温下でもしなやかに路面に追従することができるという。
開発にあたり、ハンコックのテストドライバーが行った感応試験ではコーナーリング指数が大きく向上したほか、ハンドリング指数(手応え感)も確実な進化が見られたという。
同社では「手応え感はクルマをコントロールする上で非常に重要な部分」と説明しており、この部分を強く訴求する。
この手応え感を実際のデータとして数値化したのが接地形状の分析だ。従来品はセンターよりショルダーに接地圧が集中する傾向があったが、新商品では圧が均一化しており、接地面積も3%ほど広がっていることが分かる。つまり、それが手応え感のあるフィーリングに繋がっている。
ハンコックが自信を持って投入する「Winter i*Cept iZ 2A」の発売サイズは14~18インチ、全26サイズをラインアップ。多くのメーカーがしのぎを削る冬用タイヤ市場でどこまで存在感を高めていけるのか 注目の商品だ。
「期待値以上の手応え感。ハンドリング性能も良いレベルに」
試乗会でドライバーを務めてくれたのは、モータージャーナリストの斉藤聡さん。トヨタ・プリウスの4WDモデルに新商品を装着し、会場となった新千歳モーターランドに設けた様々な雪上路を走行してもらった。
――試乗を終え全体的な評価は。
「応答は悪くないし、ハンドル修正が少なくて済む。ハンドルを切った際にちゃんとクルマの向きが変わってくれるので扱いやすくストレスがさほど無いタイヤといえる。
国産メーカーの商品と比較しても遜色のないレベルだといえそうだ。今回は雪道のみの運転だが、かなり良いレベルにあると感じた」
――課題を挙げるとするとどんな点ですか。
「応答性はかなり良いが、雪上グリップのバランスでいうと、縦方向に対して横方向が若干ではあるが足りないかもしれない。ドライバーは縦のブレーキで感じた効き具合によって、『横もこのくらい効くだろう』と思ってカーブに入るが、そうすると期待値よりも少し滑り出しが早くなるシーンがあるかもしれない。ただ、全体的にはきちんとしたスタッドレスタイヤになっている。
反面、期待値を上回ったのは“手応え感”の部分。商品説明の際、担当者が話していた通りのチューニングができている。手応えがあると乗っていて安心感が高い。『完成度を上げたい』と説明していたが、その狙いはよく出ていた」
――初めてハンコックのスタッドレスタイヤを装着した印象は。
「スタッドレスタイヤは国産メーカーや日本国内で開発を行っているミシュランなどに分があると思っていたが、ハンコックもすごく頑張っているなと驚いた。これは相当なノウハウや技術を研究しているからだろう」