小野谷機工はこのほどロードサービスカー「RSC Type-1N」を市場投入した。新モデルは発電機の配置を縦置きにすることにより、メンテナンス性を大幅に向上したほか、今後の普及が見込まれているトラック・バス用超偏平タイヤへの対応も視野に入れて開発。さらに、ユーザーからのニーズに応えて安全性確保や効率化のための様々な工夫を取り入れたことも特徴だ。同社の営業や開発、製造といった各部門が一体となって完成させた新型ロードサービスカーを取材した。
小野谷機工はロードサービスカーの製造販売を手掛けて30年の実績があり、時代の変化やユーザーの声に応えて常にその性能を進化させてきた。今回発売した「RSC Type-1N」は安全性や利便性を一層向上させた最新モデルだ。同社製造部係長RSCセールスエンジニアの松塚竹彦氏は、「当社の方針としてメンテナンス性、安全性、作業性、さらに軽労化が絶対条件であり、この4つを追求して開発した」と話す。
まず、大きなポイントは発電機の搭載方法を縦置きにアレンジしたことだ。松塚氏は「ロードサービスカーの故障の一つに発電機のトラブルがある」と指摘。その上で、「横置きの場合は周りが狭く日常点検がしにくいが、縦置きにすることでメンテナンス性に優れ、発電機の故障は劇的に減った」とそのメリットを話す。スペース面でも有利になるという。横置きした場合と比べて奥行きは半分ほどで済み、容積も約3倍に広がった。サービスカーでは多くの機材や工具を積むことが多く、車内のスペースをいかに有効活用するかといったユーザーの困りごとを解決できる。
また、発電機を縦置きにしたことで通路が確保でき、シャッター内部に備品などをより多く積めるようになっていることもポイントだ。ボックス内には自動エア充てん機、ホースリールをはじめ、インパクトレンチ、ソケット、工具類、長尺レバーなど多くの物を搭載できる収納棚を設置した。
さらに、レイアウトの最適化も図った。従来は正面にエア充てん機があり、両サイドにエア管理、電源管理ボックスが配置されていた。一方、新モデルではアナログメーターを正面から確認できるように充てん機を壁側に移動して作業場からの視認性を高めている。
RSC Type-1Nは利便性を高めた以外にもう一つ大きな特徴がある。それはトラック・バス用シングルタイヤとTPMS(タイヤ空気圧監視システム)装備車両の普及を見据えた機能だ。
シングルタイヤはTPMSとセットで装着されていることが多いため、作業に必須のドライエアーが全経路に供給される。これまではオプションだったが、今回は標準装備し、コンプレッサーは従来の7.5馬力から標準で10馬力にパワーアップさせた。
ドライエアーの供給に関して松塚氏は「湿った空気をタンクに取り入れるとドレーンが排出されてコンプレッサーが動かない、あるいは各機材を水で壊してしまう可能性があった。新モデルは水分が無いので壊れるトラブルが減った。冬場のトラブルも少なくなっていくのでは」と説明する。
なお、同社ではチェンジャーやバランサーでもシングルタイヤへの対応を進めており、今回ロードサービスカーが加わったことで主要なラインアップが整った格好だ。
さらに、ロードサービスカーの庫内にも様々な工夫が施されている。
夜間でも明るい作業環境が確保できるようにLED照明を採用したほか、サイドあおり部へ照明を追加したことでサービスカーのサイドや足元も明るく照らせるようにした。床面は滑りにくく、汚れにくいアルミ縞板貼りを採用。壁面のアルミ縞板貼りも可能だ。
また、チェンジャーとセーフティケージは余計な力を入れなくても簡単に組み立てることができる一体型となっており、スピーディな作業に貢献できる。松塚氏は「現場では時間との戦いとなる。高速道路などでは危険性もあるので、サッと組み立てられることが重要」と話す。
さらに、埋め込み仕様の機械移動レール(オプション)を取り入れれば、段差が無くなり足元の安全は一層高まる。これまではレールに小石などが挟まるのが欠点だったが、今回の新型は台形にして異物が噛みにくいように工夫している。
この工夫はマイナスドライバーなどで小石を除去している光景を見たことからヒントを得て改良を加えたという。さらに、ここに紹介した「RSC Type―1N」の機能の多くは、顧客とコミュニケーションを図り、そこから出てきた様々なニーズを同社の様々な部門が一体となり作り上げてきたものだ。
松塚氏は「お客様のご要望を聞くと、『ピットに限りなく近い状態にして欲しい』という声が多い。これは一言で言うと便利であること」と力を込める。ユーザーからの期待に的確に応え、安全作業の向上とメンテナンス性を高めたロードサービスカーRSC Type-1N。現場のニーズに応える力強い武器となりそうだ。