日本ミシュランタイヤは乗用車用オールシーズンタイヤ「CROSSCLIMATE 2」(クロスクライメート・ツー)を10月8日より順次発売した。新商品は急な降雪での雪上走行に対応しつつ、夏タイヤに求められるハンドリング性能やドライ・ウェット時のブレーキング性能を高い水準で満たした全天候型タイヤ。冬と夏の2回にわたり開催された試乗会でそれぞれの性能を確かめた。
進化した“雪も走れる夏タイヤ”
ミシュランの「クロスクライメート」シリーズは欧州で2015年に発売した後、2019年から国内向けにも販売を開始した。当時、乗用車タイヤのオールシーズンはラインアップが一部に限られており、同社としてもどこまでユーザーに受け入れられるか手探りの面もあったという。
ただ、蓋を開けてみれば、初年度の販売本数は想定の約3倍に達し、それ以降も毎年前年実績を上回る水準が続いている。同社では「シリーズの満足度は90%とカテゴリー平均の85%を上回り、実際に使用したユーザーの継続利用動向は91%となっている」と自信を示す。
今回、新たに投入する「クロスクライメート2」は高い消費者の支持を得た従来モデル(クロスクライメート・プラス)の性能を更に引き上げた。商品コンセプトは引き続き“雪も走れる夏タイヤ”としており、夏タイヤとしての性能に配慮している点が特徴だ。
気象庁などのデータをもとにまとめた資料によると、国内の降雪量は過去30年、徐々に右肩下がりになっている。また、東京・大阪・名古屋・福岡の都市部での降雪回数は過去10年では1シーズンに3日、過去5年では1・8日、さらに過去3シーズンでは0・8日と頻度が減ってきていることが分かった。
このような気象状況から推定される都市部のタイヤの使用環境は、「冬場でもドライ・ウェット路面で使用されることが多く、その中でごく限られた日に降雪がある」(同社)というものだ。夏タイヤとして最も頻繁に使われる中で突然の雪にどう対応するか 同社では「高水準の夏タイヤ性能は妥協せず、それにプラスして雪上性能が求められる」としている。
新商品では雪上ブレーキング性能は7%向上しつつ、ウェット性能は6%、ドライ性能は5%それぞれ高めた。さらに初期性能が長く続くようにもした。同社では「夏タイヤ性能を向上する代わりにスノー性能を下げることは絶対にしない“正統進化”だ」と強調する。
最新のパターンで様々な路面に対応
「クロスクライメート2」は新しく開発したトレッドパターンやコンパウンドを採用し、細部にわたり最新の技術を投入した。
パターンは従来品に比べてV字が大きく切れ込んだデザインとなっており、排水・排雪性能に貢献し、ウェットや雪上路面で一層高いパフォーマンスを発揮できるようになった。また、サイプはブロック同士が支え合い倒れこみを抑制するように工夫した。効果的なグリップ性能を発揮するとともに、耐摩耗性と転がり抵抗低減にも寄与するという。
さらに、エッジ部に施された面取り加工により、ブロックの倒れこみを防止。これによって接地面が最大化され、ドライ路面での高い制動力を発揮。加えて、摩耗するにしたがい、ブロック側面に凹凸と溝が出現する設計を施し、効率的に排水・排雪しながら摩耗時における性能を維持できるようにさせた。
コンパウンドにも新開発のゴムを採用。ドライ、ウェット、スノーなど、刻々と変化する路面状況に幅広く対応させている。
なお、「3PMSF」(スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク)が刻印されているので、高速道路の冬用タイヤ規制でも通行が可能だ。
雪道もドライ路面でもバランスを発揮
「クロスクライメート2」の試乗会は、2月に北海道にある交通科学総合研究所の士別試験コース、6月には栃木県のGKNドライブラインジャパンテストコースと、2回に分けて行われ、雪道性能と夏タイヤとしての仕上がりを確認した。
まず、雪道の試乗コースでは圧雪路でスラロームや坂道での性能を試してみた。装着タイヤは新旧の「クロスクライメート」。
スタート地点は雪が薄く積もっており、もし通常の夏タイヤならまっすぐにコントロールができないような状況だが、「クロスクライメート」は想像以上に路面をグリップしてスムーズに発進する。新商品はそれが一層滑らかな印象だ。
スピードを上げてスラローム走行を行ってみるが、グリップ力は全く問題がない。きちんと整備されたコース上ではあるが、まるでスタッドレスタイヤを装着しているのと同じような安心感を得られる。
さらに、今回は残溝2mmまで摩耗させた状態で同様の試乗を行い、性能持続性を確かめる機会もあった。発進・停止時の感覚は新品とほぼ同じ水準。スラロームでは無理な運転でもしない限りは、意図に合ったコース取りが可能だ。
続いて雪道の登坂路。6%と8%の勾配があり、一旦完全停止してから再び発進するテストを行ったが、挙動がブレるようなことはなく、スッと前に出てくれる。
新旧モデルの性能差は定常円を走行した際に大きく感じられた。従来品では徐々に車両が外側に振られてしまったが、「クロスクライメート2」はハンドルの舵角や操作が明らかに少なくて済む。雪道での不安感はほぼ無いと言ってもいいかもしれない。
6月、初夏のテストコースで今度は夏タイヤとしての性能を確認した。オールシーズンタイヤで雪道以外を本格的に走るのは初めてだったが、特に想像以上だった点は静粛性の高さだ。レジャーなどで長距離を走行する場合でも快適なドライブにつながるのではないだろうか。
さらに、ドライ路面でコーナリングを繰り返すようなシーンではヨレがなく、キビキビと反応してくれる。 外周路の高速走行でもオールシーズンであることを意識させない。適度な剛性感が確保されている点、特定の性能に特化せず、バランス良く仕上げているのはミシュランらしさと言えるかもしれない。
様々なメーカーがオールシーズンを投入する中で、同社は「このカテゴリーでトップを目指したい」と意欲と自信を示す。その軸となる「クロスクライメート2」。急な降雪に不安を抱える非降雪地域のユーザーにとって、安心を担保する頼もしいタイヤとなりそうだ。