バンザイは、大型車用タイヤの整備作業に従事する事業者に向けて、安全啓蒙を目的としたチラシの配布を行っている。その中では、ホイールナットに装着するインジケーターの脱着ツール「PU-SH&LL(プッシュル)33」を始め、ブラインド式安全ケージや遠隔自動TBインフレーター、電子制御コントローラー内蔵型ナットランナーを紹介。こうした取り組みの狙いについて、営業情報企画部営業推進一課参事の福田守利氏に話を聞いた。
バンザイは自動車整備用機器や検査用機器の販売をメインで展開しながら、従来、安全啓蒙に力を入れてきたという。福田氏は「我々はただモノを売れば良いとは考えていない。当然、優れたパフォーマンスの新製品もご紹介させて頂くが、“安全のために何か足りないものはございませんか”と、安心安全の実現に向けた提案も進めてきた」と説明する。
こうした中、現在同社が強化しているのが大型車用タイヤの整備作業の安全啓蒙だ。この取り組みは、国土交通省が改正した「自動車の点検及び整備に関する手引き」を今年4月に施行したことを念頭に置き、スタートしたという。
この「手引き」の改正は、近年、大型車の車輪脱落事故が増加していることを背景に実施されたもの。
国交省のまとめによると、大型車の車輪脱落事故は2011年度に11件だったものの、それ以降はほぼ毎年前年実績を上回り、2019年度には112件に上っていた。今年10月に発表された2020年度の事故件数は131件となり、統計史上最多を更新した。
こうした状況を踏まえ、国交省は大型車の車輪脱落事故の撲滅に向けて「手引き」を改正。ホイールナットの緩み防止のため、ナット及びボルトへのマーキングや、インジケーターを活用した新たな点検手法が導入された。これにより、ISO方式のホイールでは、点検ハンマーによってナットの緩みを点検する代わりにマーキングやインジケーターを活用することが可能になった。
ただ、作業者の間では新たに導入されたインジケーターの脱着が問題となった。ドライバーやプライヤーで取り外そうとするとホイールを傷つけてしまう恐れがあったほか、リングが2つ付いた連結式のインジケーターでは、片方のリングをナットから取り外す際にインジケーターが割れてしまうこともあったという。
こうした整備関係者の声を受け、バンザイが今年6月から取り扱いを開始したのがインジケーターの脱着ツール「プッシュル」だ。中央のグリップ部で作業性を配慮しながら、一端ではインジケーターを引っ掛けて取り外し、もう反対側はインジケーターをセットしてナットに押し込むことができる仕組みとなっている。
作業全般で安全啓蒙を推進
「手引き」の改正や「プッシュル」の登場を経て、インジケーターの脱着機会が増える冬タイヤへの交換シーズンを迎えるにあたり、バンザイは整備従事者向けのチラシを作成。その配布を通じて、大型車用タイヤの作業における安全啓蒙を目指している。福田氏は「『プッシュル』をきっかけにして、車輪脱落事故の撲滅に向けて国交省が呼び掛けている点検方法を確実に実施していきましょうと改めてお伝えしたい」と強調する。
また、今回の安全啓蒙チラシでは、「プッシュル」をはじめ、ブラインド式安全ケージや遠隔自動TBインフレーター、電子制御コントローラー内蔵型のナットランナーといった整備機器の紹介も行っている。
福田氏は「作業者や車を使う方の安全を実現するには、何かが一つ足りなくても問題になる」とし、「インジケーターから空気充てん、トルク管理までトータルでお伝えすることが必要だと考えた」と、その狙いを話していた。
安全啓蒙チラシで紹介する整備機器、タイヤ安全ケージは近年いくつかの進化を遂げてきた。その一つはブラインド式の爆風誘導板の採用だ。
安全ケージは、バーストしたタイヤの破片の飛散防止のために使用することが求められてきたが、実際に事故が起こると爆風が作業者を襲うこともある。同社が取り扱うブラインド式の安全ケージでは、爆風を真横ではなくブラインドを傾けた方向に誘導し、作業者を守ることが可能だ。
さらに安全ケージでは、現在の市場の需要に応えてワイドシングルタイヤに対応した製品も展開。同社ではエアー自動充てん機もオプション設定し、安全性と作業性の向上を図った。
またチラシでは、タイヤを車両に装着したまま空気充てんするケースも考慮し、エアーの注入口が4口ある遠隔自動TBインフレーターも紹介している。これにより、現場の安全と省力化を同時に担保する考えだ。
インジケーターの取り外しや空気充てんの後、タイヤを車両に取り付ける作業ではトルク管理が重要になる。そこで、バンザイは電子制御コントローラー内蔵型のナットランナーを訴求している。
福田氏は「特にISOのホイールは後輪のダブルタイヤも1つのナットで締め付けているため、しっかりトルク管理する必要がある」と指摘。その上で「安全をおろそかにしないために、こうした機器の活用もご検討頂きたい」と話していた。
大型車の車輪脱落や空気充てん作業時の事故件数が減少していかない中、整備関係者に向けて継続して情報発信する意義は大きい。
福田氏は「安全のためにはまずは知って頂くことが重要だ」と述べ、その上で「作業の安心安全の実現に向けて、様々な情報の案内に力を入れていく」と今後の抱負を示した。