エアレスタイヤの市場開拓 TOYO TIREの「ノアイアビジョン」

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カテゴリー: レポート, 現地

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は11月下旬に宮崎県内でエアレスコンセプトタイヤ「noair」(ノアイア)の技術説明会を開催し、実用化へ向けた今後のビジョンを示した。出席した執行役員技術開発本部長の水谷保氏は「モビリティ社会の変化の中、“スローでサステナブル”という新しい概念を満たしていくことにエアレスタイヤの可能性が広がっている」と展望を示した。

 同社は2006年からエアレスタイヤの開発に着手しており、2011年には実車試験が可能なレベルまで性能を引き上げた。その後、2017年には空気の代わりにタイヤ性能を支えるスポークの構造を、従来の楕円形からX字型に変更したことで耐久性を大幅に向上。車両に装着して時速100kmでのテストも行うなど実用化へ大きく前進させている。

エアレスタイヤ「noair」
エアレスタイヤ「noair」

 今回の説明会ではゴルフカートに「ノアイア」を装着して試乗する機会もあったが、通常の空気入りタイヤと比べて操縦安定性など遜色がないレベルに仕上がっていることを実証。スポークの耐久性を17年時点より約10倍に高めたことで、通常のタイヤにより近い走行が可能になった。

 ただ、現状は法整備の問題からエアレスタイヤで一般道を走行できないという問題がある。こうした中、同社は「法整備されたらすぐに投入できる状態」にしつつ、当面目指すのは低速で公道を走れる小型モビリティを活用した移動サービス「グリーンスローモビリティ」での実装だ。このサービスは過疎地や観光地での交通課題の解決と、低炭素型交通の普及が同時に進められることから国土交通省などが推進しているもので全国で普及しつつある。

 技術開発本部先行技術開発部の榊原一泰グループ長は、「グリーンスローモビリティに対してエアレスタイヤは高い親和性がある」と指摘。その上で、「このサービスは自動運転化の動きもある。タイヤの空気圧管理が不要になるという面でもエアレスのメリットを活かせる」と期待を寄せる。

水谷執行役員(左)と榊原グループ長
水谷執行役員(左)と榊原グループ長

 同社では、まずは国内でゴルフ場や施設内で使用されるカート車両への提案を進めつつ、「グリーンスローモビリティ」へのアプローチも同時に行う。さらに将来的には欧州や中国で市場展開が進む小型EV(電気自動車)への採用も視野に入れていく。

 実用化へのハードルをクリアする一つの鍵として環境面での優位性がある。「ノアイア」はリトレッドやリサイクルの検討も進めており、リトレッドはトラック・バス用タイヤの技術を適用できることが確認されている。さらに、ユーザーの好みのパターンを採用してカスタマイズに対応するといった使い方も想定し、モビリティの楽しさも実現していく。スポーク部分の樹脂の再利用については、リサイクルが可能な素材に置き換えるなど、今後検討を進めていくという。

 水谷氏は「単に空気入りタイヤの置き換えではなく、エアレスというデバイスによって新たなモビリティ社会の概念を実現したい」と意欲を示す。現在は複数のメーカーが乗用車向けのエアレスタイヤの開発にしのぎを削っている。その中で、同社では今後も性能向上に取り組むとともに、「ノアイア」がより効果を発揮できるような市場開拓を進めて差別化を図っていく考えだ。


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