2021年11月に会社設立50周年という大きな節目を迎えた小野谷機工(福井県越前市)。タイヤ整備機器をはじめ更生タイヤ製造・廃タイヤ処理の関連機器の国産メーカーとして、市場に製品を供給している。自動車が100年に一度という大きな変革期を迎え足回り整備の重要性がますます高まる中、作業の効率化・省人化と安全性を両立する新製品の開発に挑み続けている。その中から今回は「バリアスツールハンガー」にフォーカスする。新製品の解説と実演デモを担当してくれたのは商品開発本部機器商品開発グループの三田村廣大リーダーだ。
ハンガーとは一般的に吊り下げ型の器具を指す。タイヤ店の整備ピットでは重量のある機器を扱うときに、その重さを軽減するために使用する吊り機を意味する。
小野谷機工ではこれまで、天井への据え付け型クレーンシステムとして「ユニバーサルハンガー UVH」を展開。また自由に移動し任意の位置で使用可能な大型インパクトレンチ吊り機「レッグカー」もその範疇に入る。「レッグカー」では先に「F-55・F-500シリーズ」という新製品をラインアップしたばかりで、市場で高い評価を得ている。
今回新たに開発したのは「バリアスツールハンガー VTH-N01/N02・SP01/SP02」。「ユニバーサルハンガー」の設計思想をさらに深化させ、作業現場での使いやすさをより一層追求したものだ。このほど本格販売を開始した。
三田村さんは「大型車用タイヤの交換作業の際に使う大型インパクトレンチやホイールナットのトルクを管理するナットランナーは機器自体が非常に重く、作業担当者にとっては負担が大きい」と指摘する。「大型車用タイヤの整備作業の軽労化を図る」というのがこの「バリアスツールハンガー」の開発コンセプトだ。
「ユニバーサルハンガー」の場合、その構造上、インパクトレンチのみ、あるいはナットランナーのみという具合に、機器を1機、単体でしか吊り下げることができなかった。つまりインパクトレンチを使用した後、続けてナットランナーを使おうとすると、ホルダー部の機器を入れ換えなければならない。さらにレールなど部材の一部が外注による購入品のため、どうしてもコスト高に繋がっていたという。
一方、今回開発の「バリアスツールハンガー」では、機器を2機、同時に吊り下げることを可能にした(VTH-N02・VTH-SP02タイプ)。また部材を自社での一貫生産に切り替えたことで、優れたコストパフォーマンスを実現した。
三田村さんが「バリアスツールハンガー」を実際に操作する。インパクトレンチを支えるホルダー近くにストップバルブ付きレギュレーターが配置されている。「作業時、機器の使用圧を手元で簡単に設定・調整することができます。また使用中の機器を一時的にハンガーから取り外したい場合、カプラからワンタッチで取り外し・取り付けが可能なので作業が効率的となりました」と話す。
ハンガー本体の柱には照明付きストレージボックスを用意した(VTH-SP型は標準装備、VTH-N型はオプション)。ナットの一時置き、タイヤレバーやハブボルトを掃除するためのブラシ類など作業回りの工具を収納することが可能。400mmのストロークで任意の位置で高さを調整できる。「LED照明を採用し、夕暮れや車両のボディに隠れた暗い場所で作業をするときに非常に便利な装置です」と三田村さんは解説する。
ハンガー本体の上部にはスプリングバランサーを配置。整備機器を上下に高さを変えるときに、機器の重量を感じさせない仕組みだ。またスプリングバランサーを吊り下げるユニバーサルアームは伸縮性があるので、整備機器を引き回して作業するときにその動きに追随し自在に軽く、細やかな操作を実現した。
インパクトレンチ使用時の騒音を低減するマフラーや2口エアカプラ、2口コンセントも標準で装備。使いやすさ、作業効率の向上を図った。さらにオプションとして、100ボルトのコードリールセットやホースリールセット(TB用/PC用)、エアー自動充填機などをハンガー本体の柱に配備することができる。
「天井にレールを設置するための工事が必要となるので新築やリフォーム時の導入が基本だが、既存のピットでもサイズを合わせ後付けすることも可能」(三田村さん)とし、ピットの広さ、取り扱う車両の長さに応じ装備やレイアウトをオーダーメイド感覚で配置することができる。
「バリアスツールハンガー」は、エアーと電気を供給するホースの収納タイプにより品番が大別される。VTH-Nは一般的なスパイラル型、VTH-SPはキャタピラのような保護層があるケーブルベア型。特に後者はツール供給の配線や配管の絡みを防ぐ構造なので、垂れ下がったホースが車両に引っ掛かるようなトラブルの発生を大幅に抑制したという。