安全自動車が販売する非接触式のホイールアライメントテスター「ARGOS」(アルゴス)は、トー、キャンバーの測定がわずか5秒で完了するのが特徴だ。測定エリアに車両を乗り入れるだけでアライメントの測定作業を開始できるため、作業時間や労力を削減し、効率的な整備ビジネスの実現が期待できる。商品部の浮津敏幸次長は、CASEの進展を背景に「アライメントの価値の進化を提案し、『ARGOS』でお客様のニーズを開拓したい」と展望を述べる。
トー、キャンバーの測定を5秒で
安全自動車が提案するタッチレスホイールアライメントテスター「ARGOS」は、ホイールバランサーの老舗でもある伊CEMB(チェンブ)がそのノウハウを活かして作り上げた製品だ。タイヤ・ホイールへのターゲットの取り付けが不要で、大幅な作業時間の短縮を実現した。
安全自動車がアライメントテスターを取り扱ってきた歴史は長く、30年以上前には整備工場向けアライメントテスター「G-SWAT」(ジー・スワット)を発売している。同製品の導入背景には、輸入車の整備工場でのニーズや4WS(四輪操舵)への対応、“車好き”の中でアライメント調整の効果が徐々に認知されていたことがあったそうだ。
そこからアライメントを取り巻く環境は大きく変わった。近年は多くのカーメーカーがCASEの取り組みに力を入れ、ADAS(先進運転支援システム)を搭載する車両数も拡大している。こうしたことから、商品部の浮津敏幸次長は「今までとは異なる視点からアライメントの需要が生まれている。自動運転の機能などを考慮すると車をしっかり整備することがより重要になり、アライメントも欠かせなくなる」と語る。
その上で、「機械工具を扱う当社としては、アライメントの価値の進化を提案し、『ARGOS』でお客様のニーズを開拓したい」と述べていた。
「ARGOS」は、4本のコラムに取り付けられたカメラでホイールを認識する。コラムを四隅に置く測定エリアに車が進入すると、前方のモニターでは車両の停止位置を表示。指示通りに車を停めると、約5秒でトー、キャンバーの測定が完了し、数値がモニターに表れる。浮津氏によると「『ARGOS』を体験した方からはこの効率の良さが非常に評価されている」という。
ターゲットを取り付けるタイプのアライメントテスターであれば、ホイールを傷つけないよう養生するケースもあり、測定開始までに時間がかかっていた。
一方、「ARGOS」は車を動かすだけで測定が完了するため、入庫した車両を全数アライメント測定することも十分可能になる。浮津氏は「『ARGOS』を導入された方の中には、車両を全数チェックし、問題が見つかったときに有料のアライメント調整を提案するという方もいる」と話していた。
また、タッチレスのアライメントテスターも徐々に登場しているが、ターゲットの取り付けが不要でも、測定前に車両のホイールベースに合わせてカメラ位置をセッティングするモデルが多いそうだ。「ARGOS」ではカメラのあるコラムが固定されているため、装置のセッティングを行うことなく測定作業に取り組める。
次に、ランナウトデータを計測する場合、「ARGOS」では車両を後退させると自動でその測定モードに切り替わる。「ARGOS」のボタン操作などを行わなくても、モニターに表示される車両の後退および前進する目標位置を見ながら車を動かすだけで、ランナウトのトー、キャンバーが測定可能だ。
さらに、キャスター角の測定作業は、ステアリングを切るだけでスタートできる。オプションで展開するエアオート式のターニングラジアスゲージを取り付けておけば、ロック解除で降車する必要もない。
測定中、モニターではステアリングを動かす位置を表示し、誰でも簡単な作業を実現。キャスター角の測定後にステアリングをさらに切ると、T.O.O.Tや最大切れ角の測定に進むことができるが、ステアリング操作によっては、キャスター角までで測定作業を終えることも選択できる。
「ARGOS」は、コラムのサイズが異なるFULLタイプとPITタイプの2モデルをラインアップした。FULLタイプはリフト最下限で測定し、リフトアップでの調整が可能で、PITタイプはピットでの調整に適したモデルとなっている。
適用ホイールベースは1800~3200mmを基本とし、コラム設置間を調整することによりロングホイールベース車両への対応も可能となる。また、新たに幅狭仕様の「ARGOS」も検証中だという。
標準付属品には、作業方法などを表示する43インチモニター、測定エリアの車両を撮影するウェブカメラに加え、ワイヤレスキーボード、プリンター、ステアリングロック、ペダルロックを用意。また、エアオート式の後付ターニングラジアスゲージやモニター用スタンドなどはオプションで展開する。
作業効率の向上が期待できる「ARGOS」は、大変革期にある自動車業界で求められる“今までにない整備サービス”の実現に大きく貢献するだろう。