ドライ・ウェット性能を進化させたミシュラン「PILOT SPORT 5」

 日本ミシュランタイヤは3月中旬に栃木市のGKNプルービンググラウンドで、乗用車用スポーツタイヤの新商品「PILOT SPORT 5」(パイロット・スポーツ・ファイブ)の試乗会を開催した。「パイロット・スポーツ5」は、ミシュランが様々なレースで培ってきた技術を活用して高いグリップ力と操作性を実現したほか、プレミアムカーのユーザーが求めるタイヤのデザインにもこだわって開発した。「スポーツタイヤに求められるあらゆる性能を最大化した」(同社)という自信作の実力は――。

「PILOT SPORT 5」
「PILOT SPORT 5」

 「パイロット・スポーツ5」のコンセプトは「意のままのハンドリングを実現するハイグリップスポーツタイヤ」――日本ミシュランタイヤでは特に運転を好むようなユーザーがタイヤ購入時に重視する点として「ドライ・ウェットのグリップ性能」と「ハンドリング・高速安定性」を挙げる。さらに、同社の調査によると、この傾向は従来品(パイロット・スポーツ4)の開発を行っていた2015年頃と比べてより顕著になってきているという。

 こうしたニーズを受けて開発した新商品は、ウェット路面の最速ラップタイムを従来品比約1.7%、平均ラップタイムは約1.5%短縮。1周約60秒のコースであれば、従来品から「パイロット・スポーツ5」に交換することでラップタイムを約1秒短縮できる計算だ。

「PILOT SPORT 5」
「PILOT SPORT 5」

 技術面ではコンパウンドのシリカ量を増やしたほか、「デュアル・スポーツ・トレッド・デザイン」と呼ぶパターンを採用した。これは様々なモータースポーツ活動を通じて得られた知見をフィードバックして開発した非対称パターンとなる。トレッド面に占める溝の割合を広げて排水性を高めた内側と、高い剛性を確保した外側の大型ブロックにより、ウェット・ドライどちらの路面でも高いグリップ力を発揮することができる。

 また、操縦安定性を向上するために、高強度かつ耐熱安定性に優れたナイロンベルトを採用したほか、内部構造の最適化を図った。これにより、タイヤが路面と密着してドライバーの意思をしっかりと路面に伝え、またコーナーリング時における接地圧分布をより均等にして安定した走りを実現している。

 試乗会に参加した同社乗用車・商用車タイヤ事業部マーケティング部の大河内昌紀氏は、「安定したグリップ力がもたらす操縦安定性と、スポーツタイヤでありながら優れた排水性能による耐ハイドロプレーニング性能を高次元で両立させた」と商品の特徴を話していた。

安定感が実現する“愉しさ”

「PILOT SPORT 5」
「PILOT SPORT 5」

 試乗会ではトヨタ自動車の「カローラスポーツ」に、「パイロット・スポーツ5」と従来品を装着して外周路やハンドリング路で操縦安定性、ウェットハンドリングを試した。装着サイズは225/40R18。

 まず、直線からバンク、スラロームと続く外周路を時速70~100kmで走行してみた。新商品は剛性感があるため、元々総合性能に定評があった従来品から一段上の安定した走りを実感することができる。スラローム走行で多少ラフなハンドルの切り返しを行っても姿勢をキープしやすい印象だ。プロのレーサーではないのでラップタイムの大幅短縮まではいかないものの、「パイロット・スポーツ5」の安定感がもたらす“走る愉しさ”はより強く感じられる。

「PILOT SPORT 5」
「PILOT SPORT 5」

 続いてウェットのハンドリング路。グリップ性能は明らかに新商品のほうが磨き上げられている。従来品は多少手応えが少なめだったのに対し、新商品はタイヤが路面にしっかりと押し付けられるようなグリップ感が安心感につながっていく。ハンドリングはしなやかで、コース内で何度もコーナーリングを繰り返すと、旋回スピードにも差が表れてくる。

 「パイロット・スポーツ5」は、タイヤラベリング制度でウェットグリップ性能は最高グレードの「a」となっている一方で、転がり抵抗性能はほぼ全てのサイズで「A」を取得し、背反する性能を両立させている点も見逃せない。

 日常使いからスポーツドライビングまで、あらゆるシーンをカバーする「パイロット・スポーツ5」は17~21インチまでの全43サイズを3月から順次発売している。価格はオープン。

独自の黒色デザイン技術で上質な“見た目”実現

「PILOT SPORT 5」
「フルリングプレミアムタッチ」

 「パイロット・スポーツ5」は性能だけではなく、プレミアムタイヤに相応しい外観にもこだわって開発した。「プレミアムタッチ」と呼ぶデザインをサイドウォールに施したことで、足下を引き締めて車両全体により高級感を与えることを目指した。

 ミシュランでは2013年に発売した「パイロット・スポーツ・カップ2」をはじめ、プレミアムタイヤやスポーツモデルを中心にこの技術を採用しており、より高い完成度を求めて開発を継続してきたという。

 今回は「フルリングプレミアムタッチ」としてサイドウォール全周にわたってこのデザインを採用。同社によると、一般的な表面加工は溝を掘って光の反射を抑えて黒く見せている。それに対して「プレミアムタッチ」は精緻な凹凸を表面に施している点が差別化要素になる。近くで見てみると、上質なファブリックのような構造になっており、漆黒の繊細さを実現していることが確認できる。

サステナビリティも重要な柱に

 仏ミシュランは昨年「2050年までにタイヤを100%持続可能にする」というグループの目標を公表しており、今回の「パイロット・スポーツ5」でもサステナビリティは開発の重要なポイントとなっている。

 特に最後まで長く続く性能――摩耗が進んでもタイヤに求められる性能を安定して発揮させることを目指したコンセプト「Performance Made to Last」は「パイロット・スポーツ5」でも取り入れられた。

 同社では「摩耗末期まで安心して使用することで、消費されるタイヤを少なくすることができる。タイヤ製造に必要な原材料使用量や廃棄タイヤの抑制にもつながり、環境負荷を少なくすることが可能になる」としている。

 また、摩耗度が3段階で分かるトレッドウェアサインの採用と、スリップサインの視認性を向上させたこともタイヤの安全使用に貢献する技術となっている。

 


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