ブリヂストンは4月21日、東京都小平市のイノベーション拠点「ブリヂストン・イノベーション・パーク」(BIP)を本格稼働した。同日開催の開所式では、新設したイノベーションセンター「B-イノベーション」の館内を公開。BIPは、2020年にオープンした企業博物館「ブリヂストン・イノベーション・ギャラリー」や、「B-イノベーション」、テストコースの「B-モビリティ」などで構成されており、“共感から共創を生み出す場”となることが期待されている。坂野真人グローバルCTOは「小平から新しい価値を創造し、未来へつなげる」と展望を示す。
持続可能な社会を支える拠点へ
ブリヂストンは、1960年代に東京都小平市で東京工場と技術センターを開設した。それから半世紀以上が経った2019年、この小平エリアを再開発することを発表。様々なステークホルダーから同社の歩みやビジョンへの共感を獲得し、共議・共研へと関係を深め、新たな価値の共創につなげていく複合施設として、このほどBIPが誕生した。
BIPでは、企業博物館「ブリヂストン・イノベーション・ギャラリー」が、同社と様々なステークホルダーをつなぐ“共感の場”として一昨年に先行オープン。さらに、4月21日にイノベーションセンターの「B-イノベーション」と、テストコースの「B-モビリティ」が稼働を開始した。
「B-イノベーション」は、社内外の人々の交流を促進し、“共感から共創へつなげる”施設としてオープンした。館内には、各種ラボやオフィス、カフェテリアなど多様な機能が導入されている。
その一つ「ブリヂストン・オープン・イノベーション・ハブ」は、企業博物館などで同社に共感を得たステークホルダーを共議の段階へと引き上げる役割を担う。入り口部分には、約2分の映像を投影するエリアを設置。「創造を阻む壁を打ち破る」(同社)というコンセプトで制作された映像を通して、「お客様との対話を円滑に進めるためにまずはお互いの距離を縮め、一緒に気持ちを切り替える」ことを狙った。
映像エリアを抜けると、同社の製品やコア技術の展示空間に移動する。ここでは発想を広げて新たなアイデアを生み出す効果を意図し、展示品は手に取ることができるものを用意。技術を分かりやすく解説する動画も放映する。
さらに、2050年までに製品の原材料を全て持続可能なものに転換するという目標を掲げる中、現時点で研究開発が未着手となっている材料などの“困りごと”も紹介。これにより、「お客様からご提案を引き出したい」という。ここでの対話は長丁場になることを想定し、ほっと一息つけるようなミニゲームも用意した。
アイデアを膨らませる場所はここだけではない。大型スクリーンに遠隔地の現場映像などを投影できる「バーチャルシアター」では、議論の活性化に向けて没入感と開放感を両立する空間設計を施した。なかなか足を運びづらい鉱山現場などとフェイス・トゥ・フェイスに近い環境で議論し、新たな価値を探索していく。
パートナーらと生み出したアイデアを形にするのが、「ラフプロトスタジオ」だ。3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機械を備え、タイヤパターンの模型をはじめとする試作品をスピーディーに製作できる。
試作結果やビッグデータをもとに議論を深める「インキュベーションエリア」も設置した。アイデアのインキュベーション(ふ化)に向けた共議を行うため、クローズドエリアやオープンエリアを用途に合わせて活用可能だ。
さらに、共研、共創する関係に進んだ社外パートナーが、1週間や1カ月単位で使用できる事務所や実験室も用意した。
また、社内専用オフィスには、BIP内でも特に「アクティビティ・ベースド・ワーキング」(ABW)に基づく仕組みを取り入れた。ABWは「従業員一人ひとりが、いつでも・どこでも・誰とでも、自分自身で多様な働き方を自由にデザインできる」(同社)といった考え方を指し、この実践によってアウトプットの最大化を目指すという。
例えば10~30人ほどでミーティングができる開放的なエリアや、クローズドな打ち合わせが可能な空間、さらに、視界を遮る仕切りで囲まれ、集中して業務に取り組めるデスクといった様々な働く場を用意し、多様な働き方に対応。坂野グローバルCTOは「従業員の成長・幸せとブリヂストンの成長の両立を目指し、より一層自主性を尊重する組織風土の変革にも取り組んでいく」と展望を示した。
「B-イノベーション」は1フロアの床面積が広く、3階建ての低層構造をあえて選んだそうだ。同社は「一つの場所に色々な人が集まり、出会いを発生させ、セレンディピティ(思いもよらない発見)を生む」と、今後に期待する。生まれ変わった小平からどのようなソリューションが発信されるのか、楽しみに待ちたい。