小野谷機工(福井県越前市)はトラック・バス用TPMS(タイヤ空気圧管理システム)の純正センサーを読み取ってID番号のコピーを行えるOGツールと、純正センサーに対応した補修用センサーの販売を10月から開始した。同社は昨年9月に乗用車向けのOGツール、補修用センサーを発売しており、今回の製品はトラック・バス用のTPMSに対応したもの。タイヤ販売店などの収益に貢献するため提案していく。
国内市場で徐々に装着車両が増えつつあるTPMS。ただ、純正のセンサーは故障やバッテリー切れになった際、通常はディーラーでセンサーを購入し直すことが必要となる。さらに、タイヤ販売店などでタイヤを組み直してセンサー交換を行った上で、再度ディーラーでセットアップ登録を行うといった手間がユーザーの負担となるケースもある。
そういった課題を解消するために開発したのが、小野谷機工が発売する補修用センサーと専用のOGツールだ。純正から補修用へ手軽にセンサーIDのコピーが完了でき、作業を担う販売店にとっては補修用センサーの販売に加え、IDコピー料金、工賃といった収益アップも期待できる。
OGツールの端末そのものは少し大きめのスマートフォンのような形状で、見た目より軽量で、片手でも難なく作業ができそうだ。実際のコピー工程を見せてもらうと、作業はシンプルでスピーディだ。
まず、画面で車両メーカーやモデルなどを選択していく。その後、端末の近くに純正センサーを置きIDを読み取る。続いて補修用センサーを置いてコピーボタンを押すだけで瞬時にIDの置き換えは完了する。画面は日本語で表示されるため、迷う心配は少ないだろう。
また、OGツールは作業性の高さもポイントだ。純正のTPMSは点検する際、一般的にバルブキャップを外して行うが、その際に空気がわずかに漏れてしまうという。それを繰り返せば、空気圧の低下につながってしまう可能性がある。
それに対し、OGツールではセンサー位置付近に端末を近付けるだけで、タイヤ空気圧や温度、センサーのバッテリー残量、センサーIDコードが確認できる仕組みだ。
なお、今回のトラック・バス用の新モデルではアンテナの形状を作業者が使い勝手良く曲げることができるため、ダブルタイヤの内側を点検する際の利便性も高めている。
同社では今回のOGツール発売に合わせて、三菱ふそうの純正センサーに対応した補修用センサーと専用ベルトを用意した。
この補修用センサーの特徴は、純正センサーが持つ品質と安全性を同等レベルにした上で、バッテリーの耐用年数は約4年と長寿命化した点だ。さらに、車両モニターに表示されるバッテリー残量は、純正が3段階表示なのに対して補修用は%刻みにしており、詳細な情報が確認できるようにした。
センサーの装着方法にベルト固定式を採用した理由は、「タイヤ脱着時の破損リスク低減、経年劣化によるエア漏れの心配が少ない点に加え、スチール、アルミ、スーパーシングルなどホイールデザインを問わず装着が可能な点を考慮した」(同社)という。
同社では純正センサーのIDをコピーするメリットとして「ドライバーと作業者の安心感にもつながる」と強調する。
純正センサーにはオートロケーション機能があり、時速25km以上で約10分間走行させると装着輪位置を自動判別し、正しい位置に修正される仕組みが採用されている。ただ、実際には演算速度に個体差があるため機能にバラツキが生じ、場合によっては修正までに数時間かかるケースもあるという。そのため、「センサーIDと装着輪情報とのペアリングが正常に行われたか不安に感じる」といったユーザーの声も聞かれているようだ。
一方で純正IDをコピーした同社の補修用センサーは、電源を投入して1分ほどで認識できモニター表示が可能となる。
今後もTPMSを装着した車両は増加していくと見込まれている中、OGツールはWi―Fi環境であれば無料でソフトウェアをアップデートでき、追加モデルへの対応が可能だ。
小野谷機工は昨年策定した中期経営計画で、タイヤチェンジャーやホイールバランサーなどサービス機器事業と、廃タイヤ処理・更生タイヤ関連の環境機器事業の2つの柱にTPMS事業を“プラス1”として加えて取り組む方針を打ち出している。
OGツールや補修用センサーは、TPMSを販売店の収益源として定着させ、成長事業につなげていくための武器になりそうだ。