ブリヂストン ソフトロボティクス事業への挑戦

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カテゴリー: レポート, 現地

 ブリヂストンは2月1日、東京都小平市のブリヂストン・イノベーション・パークでソフトロボティクス事業に関する説明会を開き、会場では同社が取り組んできたゴム人工筋肉(ラバーアクチュエーター)や、それを活用したソフトロボットハンドの研究・開発活動を紹介する体感型展示を行った。

ソフトロボットハンド(コンセプトモデル)
ソフトロボットハンド(コンセプトモデル)

 ゴム人工筋肉はタイヤや油圧ホースで培った技術を適用して開発。ゴムチューブと繊維のスリーブで構成されており、内部に空気や油を注入して圧力を加えるとチューブが膨らみ、筋肉のように収縮する。この時に発生した力がアクチュエーターとしての機能を発揮する仕組みを持つ。柔軟性や耐衝撃性のほか、約160グラムのゴム人工筋肉1本で30kg程度の物体を持ち上げるなど、軽量で高出力といった特徴がある。

 同社は、40年ほど前にゴム人工筋肉を開発し、それを使用したロボットを作成したが、「当時は産業用のロボットが主流で、高速・大量の処理ができるものが求められていた」(同社)ため、これまで広く事業を展開する機会がなかったという。

 その後、2020年から新しいプロジェクトとしてゴム人工筋肉の事業化が再始動し、2021年に公表した中期事業計画(2021-2023)でソフトロボティクス事業への挑戦が発表された。

ゴム人工筋肉
ゴム人工筋肉

 ブリヂストンは、チューブとスリーブの間に金属の板を入れることで曲げることが可能なゴム人工筋肉を開発している。この技術を活用し、人の指のように様々な重量や硬度、形状のものを掴むことができるソフトロボットハンドを作り上げた。

 また、2022年3月には「国際ロボット展」(iREX2022)、同年9月に「国際総合物流展」といった展示会に出展し、ゴム人工筋肉を搭載したソフトロボットハンドを公開した。こういったイベントなどを通じて吸い上げた要望が、デザインのブラッシュアップにつながっている。

 さらに、ピースピッキング作業の自動化といった物流の現場での活用に向け最適化を図り、人の手のように動かすことができる指の長さやサイズ感に調整している。

 あわせて、今回の展示ではコンセプトモデルのソフトロボットハンドも披露した。現在展開するモデルとは異なる形状で、指を握る側に加え、反る側にも制御することが可能となっており、より繊細な動きができそうだ。

 人の手に近い動作が可能なソフトロボットが、道具や建物など「人間が手で操作すること」を前提に作られたもので成り立つ社会に溶け込み、“第3の手”として日常生活を支えるようになる日は近いのかもしれない。


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