ユーザーの〝困りごと〟に速やかに対応
独自のサービスで顧客のハート掴む
タイヤネット八王子は㈲ミズノが埼玉県を中心に展開する店舗のうち唯一東京都に位置し、高尾街道沿いの犬目町交差点にほど近い場所にある。圏央道あきる野インターからも近く、東京都下の郊外客が足を運びやすい立地だ。
大澤公義代表は狭山本店、新座営業所、所沢市にあるホイール修理メインのリペア店とリテール店、そして同店と計5店舗を20代から50代までの18名のスタッフと共に切り盛りしている。
元々はタイヤメーカーの営業畑出身。20年ほど前に先代が他界し、急遽会社を引き継いだ。23歳頃のことだ。
「当初は右も左も分からず、全くの手探り状態だった」と大澤代表は振り返る。一軒一軒、インターフォンを押しての営業活動。時には不審がられ、「警察呼ぶぞ」とまで言われたこともあったとか。
めげずに「タイヤ片づけます」、「いらないタイヤはありませんか?」と中古タイヤの回収を足がかりとして、地道に訪問を重ねたことが奏功して話を聞いてくれるようになり、徐々に顧客層が広がっていった。
やがて、同じくタイヤメーカー出身の元仕事仲間で現専務の細野貴憲氏が参画。徐々に増えていったスタッフと共に、BtoBからBtoCへと方向転換を図り、20年で5店舗を構えるまでに成長した。
タイヤネット八王子は2022年のオープン。出店のきっかけは、埼玉県内の店舗が軌道に乗ってきたこととスタッフの成長。新店舗出店の構想が持ち上がった際、スタッフの仕事がしやすい土地を考慮した結果、縁あってこの八王子に落ち着いた。商圏的には未知だったが、いざ出店してみると暖かい土地柄に触れたという。
同店責任者の片田浩昭氏はユーザーから「今まで遠くのショップに行っていたが、近くにあって助かる」という声をよくもらうという。常に心がけているのは、「お客様の話にきちんと耳を傾け、本当に欲しいものをみつけてそれを提供していくこと」だそう。
大澤代表のスタッフ教育は、基本的にはいい意味での「放任主義」だ。「金は出すが口は出さない」タイプで「あくまで現場ファースト。一生懸命やっている人間が一番偉いと思っているし、あくまで店舗単位、チーム単位で一番いい方向性を常に考えてやっていってもらいたいから」とする信条が、ユーザー想いのスタッフを醸成する土台なのだろう。
自店のアピールポイントとして、大澤代表は「タイヤ持ち込み交換」「ホイール修理とホイールカスタム」「タイヤお預かりサービス」の3点を挙げた。
「タイヤ持ち込み交換」は「タイヤは安く手に入るけど、自分で取り付けはできない」「他の店で断られてしまった」など、ユーザーの「困った」問題にスピーディにアプローチするものだ。
「今でこそ専門店もあるものの、10年ほど前はまだニッチな分野でした。しかしながら、潜在的なニーズは必ずあると確信し、また、自店を知っていただくためにも『そこ、やってみようよ』と取り組んできました」と大澤代表。
タイヤ販売は信頼関係が大事。そこに切り込んでいくためにも、顧客心理としてまずは比較的ハードルの低い作業面に着目した狙いはあたり、コンスタントに来店客が訪れ、現在までの信頼関係の継続につながっているそうだ。
また、「ホイール修理とホイールカスタム」では、タイヤ販売店がホール修理まで手掛けるという珍しさの延長上にホイールカスタムを位置付けた。手間がかかると思われていたホイールペイントを、安心、安全、迅速な納品システムと高品質かつ分かりやすい価格設定で施工し、提供している。
ペイントメニューは3種類あるが、さらにユーザーの個性を発揮させる塗り分けプランもある。同店では塗装ブースと焼き付け釜を完備しており、「メッキと塗装を密着させる」という特殊プライマー施工が可能だ。
カスタムペイントの塗装には、デュポン社製を使用。さらに、ゴミを最小限に抑えるため、アンデックス社製の塗装ブースで塗装し、密着を高めるために赤外線ヒーターでは無く焼き付け釜で焼き付けている。
「従来のプライマーでは、メッキで塗料のノリが悪く、早い段階で塗装が剥がれてしまいました。しかし、当社のペイントはメッキも通常塗装なみに密着する特殊プライマーを使用しています。これを施すと簡単にははがれません」と大澤代表。
同店独自の「タイヤお預かりサービス」も好評だ。「冬場はスタッドレスタイヤを履きたいけれど、今あるタイヤの保管場所はどうしたらいいのか」「タイヤの履き替えが面倒」といったユーザーからの声をヒントにしたもので、シーズンオフの間、ユーザーのタイヤを専門の倉庫で保管する。面倒なタイヤの履き替えもスタッフがスピード交換で対応する。もちろんタイヤの移動もお任せで良い。
今ではコンスタントに集客につながるサービスとして、自店の存在感と信頼につながるメニューともなっており、今後もこのサービスには注力していく意向だ。「このサービスをきっかけとして、春冬と年2回の定期的な来店を促していきたいですね。タイヤ業界の〝サブスク〟を狙います」ということだ。
経営者として多忙な日々を送っている大澤代表は、埼玉県タイヤ商工協同組合の青年部長としても活動中。今秋9月9日に埼玉県大宮市で開催予定である青年部の全国協議会に向けて、取り仕切り役の重責も担う。コロナ禍で3年ほど中止を余儀なくされたが、今回は50から60社の参加が見込まれ、低車外音タイヤの普及促進、廃タイヤ高騰の現状と今後といったテーマで意見交換を予定しているということだ。
「会員に対して事前アンケートを実施して近況報告をしてもらい、全国レベルでの情報共有をしていきたいと思っています。皆さんの元気な顔が見られて、滞りなく終了できればと願っています」と大澤代表。
社外での活動で得た知識や情報を社内へフィードバックし、それを生かしていくことで顧客との信頼をさらに結んでいく。そのステージとして、タイヤネット八王子の存在感はますます高まっていくことだろう。