CASEの進化がもたらすもの
足回り整備がますます重要に
前回(9月20日&27日付合併号・第2815号)に続き、今回もホンダレジェンド・ハイブリッドEX・ホンダセンシングエリートを試乗した。モータージャーナリストの瀬在仁志さんと自動運転レベル3(条件付き運転自動)を実現するシステムを体感しながら、CASEとそれを支える足回りの整備の重要性について考えた。
CASEとは、Connected(通信機能を有しさまざまなデータとつながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)というクルマの技術革新を表すキーワードに由来する。今回はCASEの「A」、自動運転にフォーカスする。
さて、この自動運転は現在、0〜5の6段階のレベルで分けられる。運転の主体で区分すると、大きく二つ。レベル0〜2がドライバー、レベル3〜5がシステムとなる。
もう少し詳しく述べると、レベル2は部分的な運転自動化で「システムが前後・左右の両方の車両制御を行う」もの。つまり運転支援だ。レベル3は条件付き運転自動化で「限定された条件下で、システムがすべての運転操作を実施する。ただし運転自動化システム作動中であっても、システムからの要請があればドライバーはいつでも運転に戻れる状態であることが必要」。ここのレベル3で運転の主体が線引きされる。蛇足だが「レベル2.5」などという区分は定義上にない。自動運転機能の進化の度合いをわかりやすく説明するための〝たとえ〟である。
なお、レベル4は高度な運転自動化で「限定された条件下で、システムがすべての運転操作を実施し、ドライバーが運転席を離れることができる」、レベル5は完全な運転自動化で「システムがすべての運転操作を実施する」。自動運転という言葉からイメージされるのはレベル4以降ではないだろうか。
これまで国交省が定義する自動運転のレベル区分でレベル2は実現されていたが、レベル3は今回試乗のレジェンド・ハイブリッドEXが国内で初めて実現したものだ。
自動運転レベル3
着実に進化する技術
ホンダセンシングエリートの機能の一部、「トラフィックジャムパイロット」が自動運転レベル3を実現した。ただし、これは走行中にいくつかの条件が合致しないと作動しない。今回の試乗ではハンズオフ(手離し)で高速走行し、その状態でウィンカー操作すると自動で車線変更をして前車を追い越すことを体験したのだが、これは「ハンズオフ機能付き車線内運転支援機能」による。レベル2の運転支援機能だ。ただ先進の技術とは〝一足飛び〟ではなく着実な過程を経て進化するということを実感できたのは僥倖と言える。
レジェンド・ハイブリッドEXに乗りながら、瀬在さんは「スタート地点からゴール地点へと着くということを最終目的とするなら、自動運転は今後の進化に期待がかかる機能に間違いありません」という。「ただ、クルマを運転することで得られるよろこびや、感性への訴えかけは減ってしまいますよね」とも指摘する。モビリティの楽しさは案外、CASEと相反するところに由来するのかもしれない。空調の効いた部屋よりもキャンプ場のたき火を求めることにも似て。
このクルマはカメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどのセンサーを搭載し、GNSS(全地球衛星システム)などでクルマの周囲360度をセンシングすることで、レベル3実現を果たした。
自動運転レベルが高度化し普及することでこれから一層重視されるのが、ホイールアライメントをはじめ、ボディアライメント、それにエーミングである。タイヤと足回りに大いに関わるこれらの先進的な整備にどう取り組むか。整備技術も着実に進化することを考えると〝一足飛び〟に対応することはできない。
それになによりタイヤの空気圧管理が一層重要となる。自動運転化された〝クルマが安全に走る〟ために。
=瀬在仁志(せざい ひとし)さんのプロフィール=
モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト(AJAJ)会員で、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のメンバー。レースドライバーを目指し学生時代からモータースポーツ活動に打ち込む。スーパー耐久ではランサーエボリューションⅧで優勝経験を持つ。国内レースシーンだけでなく、海外での活動も豊富。海外メーカー車のテストドライブ経験は数知れない。レース実戦に裏打ちされたドライビングテクニックと深い知見によるインプレッションに定評がある。