横浜ゴム「アイスガード 7」  氷上・雪上性能を両立。摩耗しても効く

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カテゴリー: レポート, 試乗
24年スタッドレスタイヤ試乗会1
24年スタッドレスタイヤ試乗会1

 横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「iceGUARD 7(アイスガード セブン)」は21年9月に発売し、4年目のシーズンを迎える。「よりちゃんと曲がる、よりちゃんと止まる」がキャッチコピー。これを実現するために、「氷に効く」「永く効く」「雪に効く」の三つを特徴とする。今年2月、北海道タイヤテストセンター(以下TTCH、旭川市)で開催の「24年スタッドレスタイヤ試乗会」では、これら特徴に加え、普及が進むEVやSUVにも対応するスタッドレスタイヤとして、その実力を示した。

 

 4シーズン目迎えた「アイスガード 7」

24年スタッドレスタイヤ試乗会2
24年スタッドレスタイヤ試乗会2

 

 横浜ゴムはタイヤ販売で「AGW戦略」を掲げる。中計「YX2026」でADVAN(アドバン)、GEOLANDAR(ジオランダー)、ウィンタータイヤ、18インチなどの高付加価値のタイヤ販売構成比率の最大化をめざす。

 そのウィンタータイヤの代表ブランドが「アイスガード」シリーズだ。タイヤ消費財製品企画部製品企画2グループの増渕栄男リーダーは基幹商品の「アイスガード 7」の特徴を「本来は相反する氷上制動性能と雪上制動性能の両方を従来品と比べ向上させた」と強調する。従来品「アイスガード 6」より氷上制動性能は14%、雪上制動性能は3%向上した。

 新たに採用した「シリカ配合ウルトラ吸水ゴム」の「新マイクロ吸水バルーン」と「吸水スーパーゲル」が相乗効果を発揮。氷上の水膜を吸水する効率が上がり、「氷に効く」性能が向上した。コンパウンド以外では、接地面積とブロック剛性を大幅に増加させた。幅広リブ、縦長のベルトブロック、大型ブロックを適切に配置し、氷上の発進と制動時やコーナーリングでもしっかりと接地する。

 「永く効く」特徴のポイントは氷上摩擦力。新開発の「クワトロピラミッドグロウンサイプ」は50%摩耗時に太くなる設計。摩耗時のエッジ効果をキープすることで、約4年後も氷上性能を維持する。

 「雪に効く」特徴はエッジ量を大幅に増加したことで実現。傾斜の異なる横溝やジグザグな縦溝を採用したことで、雪上のグリップや排雪に貢献し、雪上性能が向上した。

 

 北海道タイヤTCで多彩なメニューを

24年スタッドレスタイヤ試乗会3
24年スタッドレスタイヤ試乗会3

 

 自動車市場で年々、SUVとEVは存在感を増す。横浜ゴムの調査では、SUVの保有台数は16年の40万台超から22年には80万台超へと倍増。EVも保有台数・販売台数ともに着実に伸長している。

 そのような市場環境をふまえ、「相反する氷雪性能を両立したアイスガード 7が、SUVとEVに十分に対応することを体感していただきたい」と、増渕氏は今回の試乗会の趣旨を説明する。

 相対評価で比較したのは二つのスタッドレスタイヤ。乗用車用「アイスガード 7」とSUV用「アイスガードSUV G075」(以下、「G075」)だ。

 前者はクルマを主に街乗り中心に利用し凍結路面の氷上性能を重視するユーザーを、後者はスキーなどの冬季レジャーで使用する雪上性能重視のユーザーをターゲットとする。

 

 トヨタRAV4(4WD)でTTCHの屋内氷盤旋回試験場などを評価ステージに比較を行った。コーナリングと制動性能を試す。「アイスガード 7」は円旋回で横の重力がかかっても路面に密着して踏ん張り、しっかりとグリップする。

 「TTCHは路面温度がコントロールできるので、試験条件を常に安定することが可能だ。その精度の良さを活用し、素材開発やコンパウンド、ゴム配合を組み合わせてどの温度帯で効かせるかといった評価を行っている」と、スタッフは開発の状況を語る。

 雪上ではSUV用タイヤの適応性を体感。「G075」は「アイスガード 7」に比べ溝面積が多く深い。それがシャーベット状の雪上で操縦安定性の向上に寄与する。「アイスガード 7」の雪上性能も「G075」と同等以上だ。溝面積、溝深さは「G075」が上回るが、接地面積は「アイスガード 7」が9%多い。制動性能やハンドリング性能でその差はほとんど変わらなかった。

 

 SUVへの対応力はどうだろうか。ポルシェマカン(4WD)に、「アイスガード 7」のなかでもベルトブロックを1本追加した「IG70A」パターンを装着した。

 この試乗は単体の絶対評価。車両に同乗し、ドライバーが発進・制動や加速減速を繰り返し行う。増渕氏が合格ラインとする「マカンの良さを損なわない」走りを「アイスガード 7 IG70A」はみせた。

 

 EVでは、「アイスガード 7」をEV(BMW ⅰX1)と原動機車(BMW X1)に装着し、それぞれの挙動を比較する。電気とディーゼルという動力の違い、300キロ近くの重量差、しかも車両の前後で重量バランスも異なるクルマに、同じタイヤで走行し比較評価する。

 雪上ハンドリングでは、X1では「雪をちゃんと捉える感覚がハンドルを通じて伝わる」、EVでも「初期のトルクの立ち上がりからタイヤのレスポンスが非常に良い」と、ドライバーの評価は高い。

 

 最新のFRスポーツカーであるフェアレディZにワイド超低偏平サイズを装着。こちらも安定した走りだ。

 ハイエースとのマッチングを雪上で試す。2023年10月に「G075」のハイエースサイズを発売。「ドレスアップ志向のユーザー待望のサイズ。市場から好評をいただいている」という。ハイパワーであってもしっかり前に進んでいく。ハンドルを取られにくい、走りの良さを体感した。

 

 SUV/EVに対応し優れた性能を発揮

 

 今回の試乗会では、SUVや、市場で普及が進むEVへの対応力をみせた。スタッフは「摩耗や燃費で優れたレベルにあり、今のEVに十分対応が可能と考える」と、4年目を迎えた「アイスガード 7」の性能に強い自信を示した。


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