TB・LTからOR・AGまでワイドに対応
小野谷機工は、大型車用タイヤチェンジャー「ビッグマスター」を一新し本格発売する。シリーズの初代モデルを13年ぶりに大幅リニューアル。「BMT−850(適応リム径16〜30インチ、最大タイヤ幅850ミリ)・1250・1250X(ともに適応リム径16〜35インチ、最大タイヤ幅1250ミリ)」シリーズとしてラインアップした。
進化したグレートツールで作業をより確実に
最近、〈シン・○○○〉という接頭辞を目にし耳にすることが多い。たとえば映画の「シン・ゴジラ」。その接頭辞には〈真〉〈震〉〈神〉といった意味が込められていると言われる。それにならえば、今回新発売する「ビッグマスター BMT」シリーズはさしずめ〈シン・ビッグマスター〉と呼んで良いのではないか。坂井良治さん(商品開発本部サービス機器開発部サービス機器二課課長)の実演デモと解説に接し、そのような印象を抱いた。
「ビッグマスター」は、大型車用タイヤチェンジャーの基幹ブランドの一つ。前モデルの「ORX」シリーズはタイヤ外径2400ミリまで、TB・LT〜OR・AGの生産財タイヤにワイドに対応する。坂井さんによると、「BMT」シリーズは従来の開発思想や搭載した機能を継承しつつ、性能を一層〈進化〉させたという。
「新製品の開発にあたっては、全国を網羅する当社の営業所ネットワークを駆使し、試作品のモニターを長期間にわたり実施しました。モニター調査はこれまでも行っていましたが、期間が限られ、ユーザーの業種や地域に片寄りが生じることもありました。今回の開発では幅広く、多くの皆さまからどこが良くどこが悪かったかをお聞きし、分析して取り組みました」と、坂井さんは話す。
ユーザーの声を機器の各所にギュッと詰め込むことで、さらなる〈深化〉をみせたのがこの「BMT」シリーズだ。
その〈真価〉はビード作業のかなめ、「グレートツール」に採用した新形状によって発揮される。スイッチ一つで「皿」と「レバー」が自動反転する機構はこれまでと同じ。だが「皿」の部分は大きさやテーパーの角度を変更し、ハンプのような段差を新たに設けた。坂井さんは「脱着・装着作業時にビード部への負荷のかかりかたと逃がしかたがより的確となり、確実な作業が容易にできるようになった」と説明する。
反転する「レバー」のほうも同様。真正面から見た形状が左右非対称だ。装着時と脱着時で「レバー」の入りかたや役割が異なるので、それに応じて形状を変えたことで、デリケートなビードまわりの作業性を高めた。
「グレートツール」と、その呼び名は従来機を継承した。ただ、ここに〈シン〉という接頭辞にふさわしい、優れたポテンシャルをみてとれる。
もう一つはコンパクト設計。本体ベースのサイズで、「ORX」シリーズは幅2480ミリ×奥行2250ミリに対し、「BMT−850」は幅1780ミリ(「BMT−1250・1250X」は幅2050ミリ)×奥行2070ミリ。限られたピット空間で、機器本体が省スペース化されることで、作業範囲や動線を確保しやすくなった。
作業性の向上に関しては、操作リモコンのパネルをスイングアームと連結したことがあげられる。
「ORX」シリーズはポータブルスタンドタイプだった。作業の内容に従ってクルー自身がそのつどそれを移動させ作業しやすいポジションに置き、パネルを操作していた。スイングアーム式はオプションでの設定だったが、「BMT−850・1250」では標準装備とした。アームには関節があるので、作業中にそれが干渉することはなく、操作時・収納時ともにスペース効率に優れる。そのうえで作業のひと手間を省くことが可能だ。
最上級の「BMT−1250X」は、起立タイプのメインコントロールスタンド+裏側での操作に便利なセカンドコントロールボックスを配備。デュアルコントロール仕様で、操作性を向上した。
「グレートツール」のツール台とチャック部のアーム台の移動方法は、それぞれのスイッチ操作で単独に動作するシングルアクション方式を採用。「BMT−1250X」には、スイッチ操作一つで両台を同時にスライドするダブルアクション方式を選ぶことが可能な切り替え機能を追加した。
省電力で低騒音の油圧ユニットを搭載。スイッチ操作で油圧ポンプが起動するので、電力使用量を抑え騒音を低減する。ビードローラーやマウントヘルパー「楽なバー」を標準で用意した。
カラーリングも本体のベースはマットブラックに、作動するパーツ部分は注意を引くレッドに、配色を入れ替えた。明るいピットが増えたことで、高級感をイメージさせるマットブラックをベースとするカラーリングを今後スタンダードとしていく考えだ。「BMT」シリーズは、このような次世代に向けた取り組みにも高い〈親和性〉がある。