(前編からのつづき)
乗用車やリフトなど各種のタイヤで実技
その後、この日のメインイベントとなる実技が始まった。校舎内の別フロアへ移動した。
専門学校の授業用車両が何台も置かれた会場は体育館ほどの広さ。受講生は4グループに分かれ、フォークリフトタイヤ、乗用車用タイヤ、チューブレスタイヤ、リング式ホイールの空気充てん・組込み・バラシ作業を見学。
「誰かやってみたい人は」と講師が声をかけ、手を挙げた受講生が慣れない手つきながらも熱心に挑戦する場面が各グループで繰り広げられた。
メンバーは日ごろからタイヤを取り扱う販売店関係者だけではない。官公庁職員やトラックディーラーなど、直接タイヤに触れることのない職種の受講生も多数参加していたが、それぞれ熱心に取り組んでいた。
実技講習後、受講生全員に修了証が手渡され講習会の長い1日が終わった。
講習会で見えた奥義「タイヤと会話する」
講習会全体に通じるのは、主催者であるタイヤ組合員ならではの経験値の高さ。実りある講習の実現に向けた意気込み、なにより事故増加に対する危機感だ。トップである磯理事長自身が「タイヤと会話するつもりで50年間付き合ってきた」大ベテラン。ともに講師を務めた組合員も皆さんそれぞれ、販売店での経験が長い。講義の端々に適切なアドバイスが出る。
「スペアタイヤの空気圧も見ましょう、というとお客様に喜ばれる」「パンクに気づかないドライバーも多い。危険なタイヤは直せないとはっきり言うことが大切」といった顧客サービスの視点は現場を通じてのもの。「この内側に体重をかけた方が」と、タイヤ修理作業時の細かな注意について、ていねいに解説されていた。
磯理事長は「本日の内容が受講生の心のなかにひとつでも残って職場の皆さんに伝えていただき、明日からの業務にこの講習が少しでも役に立てば」と語る。
社会活動で示される組合の存在意義
法令で指定された「タイヤ空気充てん」というピンポイント作業を抜き出して特化することなく、タイヤ交換全体の安全作業につながる講習会だ。
通常、受講生数は40名程度だというが、今回はその1.5倍。タイヤ組合の会員以外の参加者が多く、半年以上前から開催の問い合わせがあったそうだ。
高性能化、大口径化するタイヤ。それにともないタイヤ整備機器の操作も複雑化する。経験の浅い作業員が増加していることから、今後もタイヤ作業に関わる事故が増加するリスクは高い。
一方で、タイヤ組合は社会的使命として、この空気充てん作業講習会の開催に力を注ぐ。組合員の減少が懸念されているが、タイヤ組合の活動と存在意義は非常に大きい。今後も事故防止に向けた活動に期待したい。