東洋精器工業はTBホイールバランサーの新商品「TRIM(トリム) TP-150」を25年1月に発売する。TBはもちろん、ワイドシングル、LT、PC、SUVまで対応可能だ。上市に向けて主担当した商品企画部第二課長の細目玲(ほそのめ れい)さんに話を聞いた。
「この1台でTB/ワイドシングルからPCまですべて対応できます」と語る細目さん。
「トリム TP-150」(以下、TP-150)は東洋精器工業が満を持して上市するオリジナル製品だ。TBからPCまでという、需要のある車両をこの1台でほぼ網羅できる点が大きな特徴。
従来のバランサーではオプションだった機能やアタッチメント、安全カバーなどを標準装備とした。これまでPCバランサーのみに搭載していた機能まで持たせ、可能な限り「この1台で対応できる」ことを実現した。逆に言えば、PCバランサーをTBワイドシングルタイヤにまで使用できるようにしたとの表現のほうがわかりやすいかもしれない。
今回の上市の背景にはTBタイヤ幅のワイド化、車種の多様化などがある。とくにユーザーの声を重視したという。
「機械はたくさん置けないのでTBだけでなくPCも作業したい」「普段はPCメインだが一部でTBの需要もある」「オプションを検討する必要なくすべてのホイールに対応したい」など、限られたスペースでもできるだけタイヤ交換オーダーを受け入れたいという声は多い。とくに今後、需要の高まりが期待されるワイドシングルタイヤに標準装備で対応可能という点は大きなポイントだ。
「フルパッケージのこの1台は、使いやすさと精度を求めた機械に仕上がっています」というとおり、工夫を随所に凝らした。たとえば電源は家庭用のコンセント100V。電源確保がしやすくなると作業可能エリアも広がる。
細部にこだわった「この1台」
TP-150には作業の手順や動線なども考慮され、工夫が施されている。
タイヤを作業しやすい位置に持ち上げるリフトへの乗り入れは、目印ラインを目安に行う。それにより主軸への接触を回避することができる。同時に重量のあるタイヤ付きホイールを主軸にセットする際に自動的に最適なポジションとなるような構造設計を有している。作業者がタイヤを乗り入れしやすいよう、リフトを低床化しているのも工夫のひとつ。
リフトテーブルのスライド機構にもセーフティ機能を追加した。タイヤを乗せたテーブルがぐらつきで不用意にスライドしないように定位置にとどめるための工夫だ。テーブルにロックを付ける方法でも固定できるが、それではいちいちロックを掛けたり、解除する手間がかかってしまう。レールに特殊な機構を設けることで、リフトはぐらつくことはなく、軽く押せば必要なタイミングで移動させることができる。
細目さんは「小さな工夫ですが、安全に無駄のない動きで作業を進めるためにはとても大きな効果を体感できると思います」。可動部隙間への指や足の挟み込み防止のための対策にも気を遣い、「TBのホイールの大きさに合わせてLED照明も十分な光量が確保できています」と、細部までのこだわりを語る。
リフト右側にはフランジやテーパーコーンの収納ポールを配置した。これらのような「小さな工夫」は1日に何度もタイヤ交換作業をする現場では大きな利便性となる。
PC、TBホイール使用時のポイント
TBバランサーの位置づけだが、通常のPCバランサーと同等の機能を搭載している。自動演算機能、スタティック、ビハインド機能、省電力モード、ウエイト貼り付け指示レーザーライン、ウエイト材質の選択機能などだ。
セカンドオペレーター機能は、サイズの違う2種類のホイールデータを記憶し再入力することなく交互に測定が可能となるため効率化にもなる。安全カバーを閉めると自動でバランス測定を開始。測定終了後にインバーター制御によってアンバランスの修正位置付近で自動停止させる機能も備えた。
ホイール固定に役立つセンターフランジが標準装備となっている点もポイント。センターフランジとハブボルト穴固定アームを使用することで通常のハブ穴のみで、ホイールを固定するテーパーコーン方式よりもISO10穴/8穴ホイールではバランサーへの取り付けが容易となった。なおかつ取り付け精度/バランス精度がこれまでより向上した。
テーパーコーンはISO10穴/8穴、JIS8穴/6穴用と付属しており、各種ホイールに合わせセンターフランジとテーパーコーン、ウイングナットを選択使用して固定できる。
一般的にTBホイールをテーパーコーンで固定する場合は取り付け誤差に注意を払わないといけないが、機械へのセッティング状態を目視で確認するための低速回転プログラムが搭載されており、精度の高いセッティングとバランス測定を可能としている。
PCホイールの作業では、本体側フランジをはずしてテーパーコーンとクイックロックハンドルを使用してホイールを固定する。デザイン性の高いホイールが増えているが、特殊形状ホイールに対応した特殊テーパーコーンも標準付属品だ。
「営業職時代に私自身が改善課題として感じていた部分は、このバランサーでは軒並み解決しており自信をもってお勧めしたいし、ぜひとも多くのかたにお使いいただきたい」と細目さんは製品力の高さへの情熱を語る。
効率よいパフォーマンス性が重視される今、求められる機能をワンセットにし、「この1台」を追求したTP-150は東洋精器工業の次世代へ向けた商品群の第一歩。これからの展開に期待がかかる。
TP-150のスペックは以下のとおり。入力:LDスケールによる自動入力。スチールホイールはディスタンス/リム径自動入力、アルミホイールは自動入力。リム径8~35インチ。リム幅2~20インチ。電源AC100V。エアー(タイヤリフト)800~1000kPa。