タイヤ整備機器新製品  小野谷機工 大型タイヤ用フルオートチェンジャー  「オートプロフット APF-09シリーズ」

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カテゴリー: レポート, 整備機器

 全自動機をさらに安全で使いやすく

 液晶タッチパネルで工程を可視化

 

(1)「オートプロフット APF-09」と坂井さん
(1)「オートプロフット APF-09」と坂井さん

 小野谷機工が大型タイヤ用オートチェンジャーを発売し、ことしで30年を迎えた。記念すべき節目に新世代機を開発し、本格発売した。「AUTO PROFOOT(オートプロフット) APF-09シリーズ」がそれ。大型タイヤの脱着作業をフルオートで可能にする、特許取得の各種装置を搭載。新たな安全機能を採用し作業の安全性をさらに向上しながら、オートチェンジャーが実現する作業現場での省人化と軽労化を果たした。

 

 品質重視のモノ創りに徹し創造と行動でオンリーワンに挑戦——小野谷機工が掲げる企業理念の冒頭だ。それをかみ砕いて文章化したのが以下に引く部分。「事業環境の変化においても、創業者の理念である、『独創性』『頑丈なモノをつくる』『ノントラブル』というモノ創り品質へのこだわり、『品質』を経営の基本に置く。『オンリーワンの価値』を生み出す始まりは、お客様の声を『聴き』現場での迅速な『行動』にある。」(原文ママ)

(2)新機構のタイヤストッパー
(2)新機構のタイヤストッパー

 「オートプロフット APF-09シリーズ」はこの企業理念をそのまま具現化した製品だと表現しても言い過ぎではないだろう。

 商品開発本部サービス機器開発部サービス機器二課課長の坂井良治さんによると、全自動機の開発は創業者の〈悲願〉だったと明かす。同社の前身、株式会社小野谷屋の設立が1961年。設立と同時に生産を開始したのが国産初の電動式タイヤチェンジャーだ。その後71年に現社名に変更し、タイヤまわりの整備機器を次々と上市する。

 新製品を企画・開発するときに、創業者から「大型タイヤの交換を全自動で可能にしたい」と口にのぼったそうだ。自社が持つノウハウを活用して実現する〈シーズ〉志向のモノづくり、その筆頭がフルオートチェンジャーだったのだ。

(3)自動脱着作業のワンシーン
(3)自動脱着作業のワンシーン

 現在のように労働人口が減少の一途をたどる前、同社は時代に先駆け95年に全自動大型チェンジャーの第1弾を上市した。以来30年、適応サイズの拡大や作業速度のアップ、作業空間のコンパクト化、安全対策など市場から〈ニーズ〉が寄せられるようになった。実際に使ったユーザーの声を製品開発に反映する。機構には改良を重ね、新しいアイデアは機能や装置として搭載しモデルチェンジを行ってきた。最新の「APF-09シリーズ」は、30年の知見と技術を集大成した。

 

 「APF-09シリーズ」は適応リムによってこまかくグレード化し、製品ラインアップを揃えた。「APF-09CF」は適応リム径17.5インチ/19.5インチ/22.5インチに対応。タイヤの出し入れを容易に行うことが可能なリフティング装置をはじめ、後述する新機構のタイヤストッパーなどの各種の機能と装置をフル装備した。

 この「09CF」を最上位グレードに、19.5インチ/22.5インチ対応の「09BF」、22.5インチ対応の「09AF」をラインアップ。さらに「09AF」以上のグレードでは標準装備のセーフティライトカーテンなどを省いたコストパフォーマンス重視の「09A」を用意した。「APF-09シリーズ」の本体寸法は幅2290ミリ×奥行1770ミリ(「09A」は1600ミリ)×高さ2105ミリ。適応最大タイヤ径φ(ファイ)1100×幅315ミリ。

(4)タッチパネル
(4)タッチパネル

 モニターに液晶タッチパネルを採用し、直感的で使いやすいオペレーションを実現した。「パネル画面で今、どの工程の作業を行っているのか、ひと目でわかる」と、坂井さんは述べる。自動運転から手動運転へ、スイッチ操作で切り替えが可能。

 「APF-09シリーズ」で新たに搭載した機能の一つがタイヤストッパーだ。坂井さんは「タイヤ外しの作業時に、タイヤ・ホイールの状態により予期しないタイミングでタイヤがホイールから抜けることがあった」という。そのような事態が発生したときに、タイヤストッパーはタイヤが機器の外部に飛び出すことを防ぐもの。「より安全に作業することができる」と、坂井さんは解説する。

 また、「APF-09シリーズ」は、ディスクローラーの軸受け部分を改良し、封入ベアリングを採用した。タイヤビード部にプレス装置を押し込むときに強く負荷がかかる部分だ。ベアリングを仕込むことでローラーの回転を安定させ、摩擦を軽減しメンテナンス性向上にも貢献する。

 タイヤのリフティングからチャック台のスライド、液体クリームの自動噴霧、ガイドプレス、ビードプレス、ビードローラーの伸縮といった脱着作業に関する一連の装置はオートチェンジャー技術をアップデートし採用した。TPMSセンサーバルブ回避モード、ハンプ越えモードといった特許取得の装置も引き続き搭載している。

 また、省電力の油圧ユニットを搭載。消音器を備えることで作業音の低減を図った。カラーリングも本体のベースをブラック、作動するパーツ部分をレッドへと配色を入れ替える、新オノダニ・カラーとした。

 

(5)機器の動画へアクセスするQRコード
(5)機器の動画へアクセスするQRコード

 「APF-09シリーズ」の自動運転による作業時間は、タイヤ外しで1本あたり1分50秒、組み付けで1分45秒。バルブ回避モードの場合はそれぞれ20秒程度時間が増すという。それでも2分強というところ。坂井さんは「各工程で安全対策を施しているので、そのままであれば時間が増えるところだが、油圧ポンプの容量をアップさせるなど工夫を凝らすことで、過去の機種に比べると作業時間を短縮化した」と説明する。

 人手不足が顕著な現在、「安全に、だれもが楽に」大型タイヤを交換可能な作業場の実現が求められる。オートチェンジャーの開発に取り組んできた30年という長いキャリアによって、理想の姿へと一歩、近づいた。

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