タイヤ整備機器新製品  東洋精器工業  センターロック式タイヤチェンジャー「ピット A500」

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カテゴリー: レポート, 整備機器
①「PIT A−500」と細目さん
①「PIT A−500」と細目さん

 東洋精器工業はタイヤチェンジャー「PIT(ピット)」シリーズに、センターロック式レバーレスチェンジャー「PIT A−500」をラインアップ。本格販売を開始した。同社はセンターロック式チェンジャーとして、ハイグレードクラスの「PIT A−5000」とスタンダードクラスの「PIT M−897」を上市し展開中。新商品はその中間、ミドルクラスの位置付けとなる。今回の新商品上市によりセンターロック式チェンジャーのラインアップが揃った。商品企画部第二課長の細目玲(ほそのめ れい)さんが商品解説と実演デモを担当してくれた。

 

 楽な姿勢でレバーレス作業が可能

 コントロールパネルでシンプル操作

 

②コントロールパネル
②コントロールパネル

 復習となるが、タイヤチェンジャーの歴史をひも解くと大きく二つのタイプに変化してきた。

 スチールホイール全盛期に最初に登場したのがハブ穴で固定するセンターロック式。アメリカンタイプと呼ばれる。これはリム円周にツールを接触させながらタイヤの着脱を行う方式。もう一つは転倒やスイング機構を備える支柱部を有しテーブル板のチャック爪でリムを挟んで固定するチャッキング式。ヨーロピアンタイプと呼ばれる。

 前者と後者とでは機器としてのフォルム(姿・形)や脱着作業の手順が異なる。アルミホイールの普及とともにリムに非接触でタイヤの着脱が可能なヨーロピアンタイプへと移行し現在に至る。

 かつてクルマをカスタマイズすることがトレンドだった。ドレスアップが大流行した当時、リムのデザインに深みをもたせたディープリムのアルミホイールが登場。なかでもリバースリムは見た目に迫力がありドレスアップ性が高いことから、またたく間に市場を席巻した。ところが近年はデザイン性の高いアルミホイールが新車装着されるようになった。それを受けアフターマーケットでのドレスアップ需要が冷え込み、リバースリムは市場で縮小した。

 それを背景に、センターロック式レバーレスチェンジャーの需要が急速な伸長をみせ始める。レバーレスユニットを備えた、言わばアメリカンとヨーロピアンの究極のハイブリッドタイプだ。セッティングが容易で、非リム接触式で労力を要せず、ノーマルから超偏平大口径タイヤまで作業効率にも優れている。

 世界の先進国ではセンターロック式レバーレスチェンジャーへの移行率が既に50%近いという。しかし日本は10%にもほど遠い。まだまだ遅れているためにシニアに差しかかった世代はヨーロピアンタイプでしか作業経験がない人がほとんど。フォルムや手順の違うセンターロック式が“食わず嫌い”になっていると考えられる。

 「1度、センターロック式をお試しになると、その作業性の良さや安全性に多くの皆さまからご賛同をいただける」と細目さんは語る。スタッフの世代交代が進むにつれセンターロック式への違和感も薄れていくだろう。

     ◆

③上下同調機構のブレーカー
③上下同調機構のブレーカー

 新商品はイタリアの老舗メーカー、コルギー社製。「PIT A−500」にはコルギーの独自機構であるレバーレスユニットを採用し、一部ヨーロピアンタイプの形状を残しつつも同等以上のユニット剛性を確保した。

 適用リム径は12〜32インチ。軽自動車からSUV、LTと対応車種は幅広い。最大タイヤ外径1200ミリ。スピーディさ、優れた作業性はセンターロック式ならではの機能を発揮する。

 たとえばビード落とし。一般的なヨーロピアンタイプは床にタイヤを立てたポジションでアーム式のビードブレーカーを使い作業する。どうしても背を折り中腰の姿勢で力のいる作業を続けなければならない。

 新商品はタイヤリフトを標準装備。それにより重量のあるタイヤを任意の高さで昇降・停止が可能。ターンテーブルにセットし難なくシャフト固定する。細目さんがコントロールパネルでスイッチング操作。ディスクローラー式ビードブレーカーのローラー位置をホイールのリムに合わせる。ブレーカーは上下同調機構なので、上ブレーカーの位置が決まると、下も同時に位置決めが完了する。独立したディスクローラー式ビードブレーカーが上下にそれぞれ標準装備されていることから、効率よく表面・裏面のビード落としが完了する。

 作業者は操作パネルをオペレーションするだけで背を折らず楽な姿勢をキープしたまま作業を進めることができる。また、ディスクローラー式ビードブレーカーは、ビード部やホイールに無理な力を加えることなく安全にビードブレーク作業ができることも特徴の一つ。

 細目さんは「従来のヨーロピアンタイプ型のマウントヘッドを継承しており、レバーレス機に苦手意識を持つ人にも受け入れやすい機械に仕上がった」と話す。

 レバーレスーツールにもコルギー独自の機構を採用。「ビードへのストレスを極力回避し安全にビードをめくり上げることができる」と解説する。

④オートマチックでのレバーレス作業シーン
④オートマチックでのレバーレス作業シーン

 「PIT A−500」にはビードプレッシングツールを標準搭載。上ブレーカーと併用することで、偏平タイヤの装着で起こりがちな上ビードの浮き上がりを防止し、確実な組み込みをサポートする。ターンテーブルの回転は可変インバータで制御。低速から高速まで、ペダルの踏み加減で変化し「すべての回転域で自動的に最適なトルクに制御される」という。

 コントロールパネルのスイッチやボタンは数が少なくシンプルな配置。すべての機能を直感的に操作することが可能だ。「操作性も本体剛性も上位機種である『PIT A−5000』にひけをとらない。サポートアームをはじめリバースリム対応のリバースフランジやLT用アダプターが標準装備のフルパッケージ仕様でご用意した」、このように細目さんは説明する。

 ドイツゴム工業会の規格、WDK認証マークを取得した。本体のカラーリングには落ち着いた深みのあるグレーを採用。輸入車ディーラーのピットにもマッチする、格調の高いデザインとカラーリングにした。また、一部のドイツ車両メーカーのタイヤ交換指定機種にも選定されている。

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