高いサービスと対応力で勝ち残る、中部タイヤセンター

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 名古屋市港区。南部には日本を代表する国際港である名古屋港があり、コンテナを積んだトレーラーや大型トラックがひっきりなしに行き交う。そんな物流の要衝で生産財を中心に多くの車両の足元を支えている中部タイヤセンターは、業界に先駆けて24時間対応のレスキューサービスやITを活用したタイヤ管理システムの導入など付加価値のあるサービスに注力することで顧客の信頼を獲得してきた。林鋼司社長は、「専業店だからこそできる仕事のやり方がある」と語る。

危機感はあるが、やれることはまだある

 同社の設立は1969年。9年後の1978年には港区に隣接する海部郡にも営業所を設立した。現在は33名の従業員を擁し、林社長、福元正人常務、前社長の市原昭会長の3名による共同経営という形をとる。

福元正人常務と林鋼司社長(右)
福元正人常務と林鋼司社長(右)

 林社長が入社したのは今から33年前。整備やメンテナンスの現場作業、営業担当を経て2年前に社長に就任した。福元常務は1997年に入社。当時は課長だった林社長とともに、苦楽を共にしてきた。

 林社長が役員になった頃、物流会社を取り巻く環境は、運賃は下がる一方で燃料が上がっていくというどん底の状況だったという。ただ、「当社は割と自由に仕事を進める環境下にあったので、裁量に任せた仕事を進めることができた」と振り返る。その反面、「立ちふさがる壁があっても自分たちで何とかしないといけなかった」

 福元常務は、「ピンチはチャンスと言うがチャンスはそんなに簡単には来ない。ただ正直な仕事を継続することで乗り越えられた。我々の後ろに誰もいない。仕事への責任からは逃れられない」と続ける。

 愛知県の場合、他県と比べると「専業店が活躍できる土台がある」そうだが、それでも近い将来、どう変化をしていくのか、危機感は強い。

 こうした中、同社が以前から磨きをかけてきたのはライバルを圧倒するアフターサービスだ。福元常務は「価格ではなく誠心誠意応えることで、客が客を呼ぶ商売に繋がっている」と話す。

 例えば20年ほど前、メーカー各社がサービス網を整備するより早く、静岡県から関西方面までカバーするネットワーク作りを進めてきた。

 「2人で現地のタイヤ販売店にお願いに伺ったこともあったし、遠方でパンクした際には休日でも駆けつけた。お客さまのために始めた24時間対応がどんどん広がり、関東や関西の車両でも中部地区で何かトラブルが起きたら対応してきた」

 今では本社と営業所を合わせて12台のサービスカーが年中無休で24時間、タイヤのトラブルに対応する。

 一方でタイヤの管理に関しても先進的な取り組みを進めてきた。通常は管理票に手書きでタイヤの情報を記入していくケースも少なくないが、同社では独自に開発したITシステムを活用し、あらゆるデータを記録に残す。スタッフが点検などを通じて、タイヤや車両の状態を細かくチェックする仕組みは15年以上前に確立させ、その後もバージョンアップを繰り返している。

中部タイヤセンターの本社
中部タイヤセンターの本社

 こうした管理方法は近年、各社が取り組みを強化しているソリューションビジネスの鍵となるメンテナンスサービスの先駆けとも言えるかもしれない。

 「販売したタイヤに最後まで責任を持って、『ここまで徹底的な管理をしています』という姿勢を示さなければ大手の運送会社とは取り引きできない。僕らはそれを普通にやってきた」(林社長)。

 一歩先を見据えた取り組みが価格競争に巻き込まれない今の中部タイヤセンターのポジションを築き上げる礎にもなっている。

 近い将来、物流の合理化がさらに進み、保有台数が減少していくのは確実視されている。そうした状況下でいかに生き残っていくか――。林社長は力を込めて次のように話す。

 「単にタイヤを卸すだけの商売なら簡単だが、そこにサービスがなければいけない。必ず付いてくるサービスに重きをおいていくのが当社のスタンダード。そういう想いで今までもやってきた」

 そして地域に密着したタイヤ専業店だからこそ可能な対応力をさらに向上させていく。

 「直営店の展開が増えている他県の状況を聞くと少なからずシステマチックになっているようだ。それに対して当社はお客さまに何が必要なのか、細かい部分まで分かっている。危機感はあるが、まだまだやれることはある。お客さまの立場に立ってサービスを徹底していくこと、そしてレベルアップしていくことが生き残るための策」

 未来への展望について林社長は、「危機感の中でどれだけ自分たちが動けるか。1日1日を頑張ってやっていくしかない。これが10年後に繋がっていく」と決意を示す。福元常務は「今を頑張れば次の世代はもっと明るくなると信じている」と笑顔で話した。

 林社長と福元常務はともに現場の叩き上げ。「仕事をしていく中でお客さまからの感謝の言葉に勝る喜びはない」と口を揃える。

 新品タイヤの価格下落や車両台数の減少などタイヤ専業店を取り巻く環境は年々厳しさを増し、成長の鈍化は避けられない。そうした中で同社がシフトを強めてきたのが徹底したサービス力。「新品販売で終わらせていては将来がない」と感じ取ることができたのは、絶えず顧客と真摯に向き合ってきたからこそだ。

 「これで満足はしていない」――追求するのは顧客の満足。「何を提供すれば満足してもらえるか」を徹底的に考え抜き、そして実行していく先に未来が見える。


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