日本グッドイヤーは2月から乗用車用タイヤの新商品「EAGLE F1 asymmetric3」(イーグル・エフワン・アシメトリック・スリー)の販売を始めた。同社のハイパフォーマンスタイヤ「イーグルF1 アシメトリック2」の後継となる新モデルは欧州市場ではすでに先行発売されており、メルセデス「Eクラス」やジャガー「XF」に新車装着されている。国内では17インチから20インチの全29サイズをラインアップ(価格はオープン)。同社が昨年10月に富士スピードウェイで開催した試走会で一足先に新商品の性能を体感した。
性能に寄与する3つの新採用技術
新商品には3つの新しい技術が採用された。コンパウンドには「新グリップブースターテクノロジー」が新たに用いられ、剛性向上粘性レジンを採用したことでより路面とトレッド面が柔軟に密着。ドライ・ウェットの両方でブレーキング性能とハンドリング性能を向上した。加えて「アクティブブレーキングテクノロジー」によって、ブレーキング時の路面との接地面積をより拡大し、制動距離の短縮に貢献している。
さらに「レインフォースドコンストラクションテクノロジー」で構造部分を改良し、新レイヤーコードを採用した。構造とプロファイルの最適化によって、接地面積が広がり偏摩耗の抑制にも貢献。アシンメトリックボトムレイヤーがコントロール性能と応答性を向上させている。これらを併せた高剛性の軽量構造が、ハンドリング性能やコーナリング性能、耐摩耗性能、低燃費性能に寄与し、全体的なレベルを引き上げている。
開発エンジニアのミカエル・シャッサン氏は、「従来品と比較して全体的に性能が向上しているが、特にコンパウンドを改良したことによって、ブレーキング時により路面に吸着することでウェット性能が大きく向上している」と新商品の特徴を説明する。
また、「トレッドを改良し、ブロック断面のレイヤ構造の最適化をしたことによって、接地面積が大きくなった。これによって、路面に対して今までよりもダイレクトなハンドリングを感じられるようになっている。
一方、剛性を向上するために通常のビードは数本のワイヤーを束ねているが、新商品のビードは非常に長い一本のワイヤーをぐるぐると巻いている。この手法によってビードの強度が増し、従来品よりもタイヤの構造全体の強度を上げている」と語った。
全体のバランスについては「ウェット性能を飛躍的に向上させた分、トレードオフとして転がり抵抗に若干の課題が残っている。この点を今後の開発に活かし、さらに良い走りを目指してタイヤをより進化させていく」と今後の目標を話した。
大きく進化したウェット性能を実感
試乗の比較対象は従来品(イーグルF1 アシメトリック2)で、車両はレクサス「IS250」を使用。S字クランク、ウェットコーナー、パイロンスラロームの設置された外周を周回するコースで比較した。
まず、時速約40kmで進入したS字クランクで、スポーツ走行に縁がない人間でもその力強いグリップ力を実感できた。
加速しながらステアリングを切ると、従来品よりもさらに路面を強く掴んで車体をスムーズに運ぶ。タイヤを通した車体と路面の一体感があり、頭の中のイメージ通りにクランクを抜ける印象だ。
またウェットコーナーでは濡れた路面を意識させない性能を発揮し、外に膨らみ気味になっても軽くブレーキを踏む程度で進路を回復。あまり運転に自信がない人でも、一定速度を保ったまま不安がなく曲がれるのは大きなメリットとなる。従来品も充分なウェット性能があったが、新商品はオーバースピード気味に濡れたカーブへ進入した時の“ヒヤリ”とする瞬間を感じさせない。
続く下り坂の直線に設置されたパイロンスラロームでは、軽いステアリングだけで自然に車体を転換できた。狭い隙間を直感的にすり抜けられる気持ち良さも、このタイヤの特徴のひとつだろう。最後の直線で加速した状態から思い切りブレーキを踏み込んでも、ハンドルをまったく持っていかれない。すんなりと減速しながら、停止したいと思った位置へ自然に止まる。
全体的にグリップ力が大きくなったことで、ステアリングへの応答性が向上しつつも、車体を行きたい方向へ感覚的に操りやすい印象を受ける。またウェット性能が高くなったことで、雨の多い日本のニーズにマッチしているといえる。
欧州の走りを楽しむイメージを
日本グッドイヤーの金原雄次郎社長は新商品について、「新商品を日本市場に投入することで、当社の欧州で精錬されたプレミアムな走りを楽しみ、イメージできるブランドとして訴求していきたい」とし、高級感のあるブランドとしてプレミアム路線での販売戦略を視野に入れる。
「グッドイヤーといえばオールシーズンタイヤの代名詞となるのと同時に、当社のタイヤは自由な走りを楽しむというイメージを持っていただきたい」と、同社のウィングフットに掛けて販売への意気込みを見せた。