タイヤショップ亘理ゴム。星勝己さんが代表取締役を務める星商事がその運営母体となる。中古タイヤの販売にも注力し、市場でのポジション確立にも努めているさなかだ。
店の所在地は仙台市太白郡郡山8-5-38で、国道4号線・仙台バイパス沿い。東北自動車道・仙台南ICに直結する仙台南部道路との交差点にも近く、クルマ利用者にとってアクセスは極めて良い。東北本線・太子堂駅からの徒歩圏内。古くからの戸建てや新興の集合住宅が多いエリアだ。
同社は1969年、星社長の父、星栄之進氏が神奈川・横浜で創業。73年に仙台に移り、亘理ゴム商会としてTB用や乗用車用の中古タイヤの取り扱いを開始した。
2009年、2代目の星勝己さんが創業者から事業を引き継ぎ、併せて星商事として法人化。同社社長に就任した。その2年後、2011年3月11日に東日本大震災が起きる。人的被害は免れたものの、建物をはじめ周囲一帯は水に浸かった。それをきっかけに12年3月、現在地に移転した。
人と車の感動を創造する
現店舗はカーディーラー店の跡地。500坪という広い敷地を駐車スペースや在庫展示に活用し開放感のある外観デザインとしている。スタッフは星社長を含め7人体制。地域密着型タイヤショップとして、仙台市内とその周辺のオーナードライバー、中小の企業法人を顧客としている。
タイヤショップ亘理ゴムでは国内外のメジャーブランドを中心に取り扱う。また新品タイヤとともに力を入れているのが中古タイヤの販売。
それと言うのも、創業者がそもそも中古タイヤの売買からスタートし開業した店だからである。事業を継承した星社長は中古タイヤを事業のコアと位置付けており、店にとってそれは他店との差別化を図るアイデンティティでもあるのだ。
従って、中古タイヤの取り扱いには徹底的なこだわりをみせる。星社長は「当社が規定する規格に適合したタイヤのみを販売しています」と言う。1本1本、ていねいに検品し、スタッフの手作業で洗浄。ホイールに組み付けしエア漏れ等の異常がないか、丸1日放置するなど、徹底的に検査を行う。この繰り返しの検査をクリアした良質な品のみを販売する。
また、これら中古タイヤは残溝の状態と製造年月によってSランク・Aランク・Bランクと3段階に分類し、インチごとのランク別均一価格制を導入している。
残溝の状態を情報公開するにあたって、現在は「8分山」や「8.5分山」などと見た目の印象で判断し表示している。だが星社長は「お客様により正確にお伝えするには、残溝を実測しミリ単位でお知らせすべき」とし、今後は表示方法を変更する考えだ。
ときに中古タイヤは値付けの根拠があやふやで買いにくいと指摘されることもあるが、タイヤショップ亘理ゴムは明朗会計に徹し、来店客にわずかな不安も与えないよう努めている。「お客様が見やすいよう展示し、店全体で買いやすい雰囲気づくりを心掛けています」、星社長はこのように話す。
市場では日本製品の品質の高さを背景に、“メイドイン・ジャパン”や“ユーズドバイ・ジャパン”の中古タイヤ需要は底堅い。ただ星社長は「コンディションが良好でない品が市場に出回ると、それによって中古タイヤ全般の評価が下がってしまう」ことを懸念する。
そこで星社長が考えたのが、中古タイヤの品質基準を第三者機関がオーソライズし客観的に認定する仕組みをつくること。先般、同業者らの有志と「世界リサイクルタイヤ研究同志の会」を結成したばかりだ。
ゆくゆくは「世界リサイクルタイヤ研究機構」として一般社団法人化を目指す方針で、星社長は事務局として旗振り役を務めている。それにより今後、市場で中古タイヤのポジションを確立し、ユーザーには良質な品を提供していきたいと展望を語る。
地域社会との交流も、地域密着店を標榜するタイヤショップ亘理ゴムにとって重要な活動。月毎にテーマを変えるワークショップに協賛し、店内のカフェコーナーをその教室として提供する。
「メリリーの会」と称するそれは、1月に「ポーセラーツ(転写シールを利用したテーブルウェアづくり)」、2月に「お雛様巻きずし作り方」、3月に「パンフラワーでリース作り」と、ことしも盛況裡に行われているところ。作品の一部は店内に展示し、それが次の企画の呼び水となっているようだ。
また地元商店街などが主催する、店の店主や従業員が講師となり専門知識やプロのコツを無料でレクチャーする講習会「長町まちかど教室」にも参加。地域経済の振興に力を注ぐ。
星社長は事業を「人とくるまの感動創造業」と定義し取り組んでいる。それを具現化するにはタイヤ・ホイールを活用し資源を再循環することが鍵となるという。オンリーワンの会社になる――その夢の実現に向け、同社の挑戦は続く。