トライポッドワークス(宮城県仙台市)は新型タイヤ空気圧センサー(TPMS)「BLUE-Sensor」(ブルーセンサー)をリリースした。2輪車から大型トラックバスまで、エアバルブの形状が合致すれば同一の規格を使用できる。現在TPMSの大勢を占めるホイール組み付け型と異なり、エアバルブにキャップとして装着して使用するため、取り付け作業には特に技術を必要としない。
クラウドサービスを得意とする同社が何故TPMSを取り扱うのか。その狙いに迫った。
菊池務代表取締役常務はTPMSを、同社における総合的な車体データを取得するユニットの一つと位置づける。
「当社の最も強みとする分野は、データをクラウドに集積し、活用するシステムの構築。車体の運用データを集積し、運用方法や安全情報など、さまざまな活用をしていただくためのシステムを事業者様に提供していく。TPMSはその一つで、ドライブレコーダー等のデータと同様に、タイヤの状態を取得するために取り入れた」
「ブルーセンサー」はBluetooth4.0で接続するため、国内外の技術適合基準に準拠し、かつスマートフォンとの親和性も高い。製造は台湾の車載品メーカーSYSGRATIONで、同社は同製品の独占的販売契約を結んでいる。
対応空気圧は最大1280kPa。大型トラックバス用タイヤの高圧にも耐える。最小で2つから運用できるため、バイクの空気圧チェックにも適している。
「このTPMSは最大で32輪まで装着が可能なだけでなく、電池は市販のボタン電池を使用した交換式。さらにバルブに外付けされているので交換も容易。例えば飛び石に当たって外装が破損した場合、その場で1つ交換するだけで運用を続行できる。予備を車載しておけば、長距離を走るトラックでも自分でメンテナンスが可能なのが利点」
卸売価格はオープンだが、1ユニットあたり6000円程度を想定しており、より安く気軽に交換できる消耗品としての位置づけをしているという。
また、組付け型だと冬タイヤが必要な地域では2セット必要になるが、バルブキャップ型なら空気充てん時にエンドユーザーが自分で取り外し、付け替えれば済む。
「今回ブルーセンサーを選んだのは性能の優位性もあるが、国際特許を取得していることも理由の一つ。類似商品の追随がないのは大きなアドバンテージといえる」
同社はなぜ車両の運用データのクラウド化を手掛けたのか。それは東日本大震災に起因する。
同社と共同で実証実験を行った仙台バスは、震災当時、仙台空港に押し寄せた2メートルの津波で観光バスのほとんどが流され大きな被害を受けた。その被害から再建するにあたり、より効率的で安全にバスを運行することを目指した。
「GPSや車載カメラの情報をもとに、事故多発地帯や運転時の要注意地点を共有することが可能になる。このデータを活用すれば、県外から就職した運転手もすぐに地元の情報に慣れ、安全な運転ができる」
より多くのデータを取り、安全な車体運用をしながら、コストは安く。電池交換式でエアバルブ装着型の同商品はエンドユーザーのニーズに合致しているという。
「タイヤのデータを日報としてスマートフォンからメールで送信できる。それすら必要ないという人には、音声で状態を知らせるユニットをオプションで装着することもできる」
音声での詳細な警報は、エンドユーザーの声で搭載されたそうだ。運転中に警報音が鳴っても、モニターの内容を見るのは難しいという。
「逆にすべての車体のデータをリアルタイムで管理したいという方には、8月にサービスを開始するクラウドをご用意している。ドライブレコーダーやスマートフォンとの連携など多様な提案が可能である」
同社は現時点では「ブルーセンサー」を一般に向けて市販する予定はないそうだ。ニーズがあれば対応を考えるが、基本的には運送事業者や整備などの事業者と連携し、ソリューションサービスとしての展開を主眼においている。
菊池務常務は「当社はあくまでクラウドサービスが主体だが製品単体での小売販売のパートナーも歓迎している。タイヤ業界で興味がある事業者様にはお声がけいただきたい」と話し、今後の展開に熱意を示した。