東洋精器工業は6月からセーフティケージ(安全囲い)の新製品としてLT/TB用ブラインド式セーフティケージ「TD-TBi」の本格販売を開始した。同社の太田正彦取締役販売企画部長に話を聞いた。
新製品は、空気充てん作業中に万が一タイヤが破裂した場合、そのときに生じる強烈な爆風からの被害抑制を図るもの。
セーフティケージに対する性能ニーズはこれまで、タイヤホイールやサイドリング、さらにはゴム片といった物体が爆発の衝撃で周囲に飛散することを防止するのを第一義としていた。
しかし近年の調査によると、破裂時の爆風で重大な被害を受けるケースが多いことが判明。現に、JATMAが先にまとめたタイヤ空気充てん作業時の事故実態調査をみても、破裂したときの爆風によって作業者が大きなダメージを受けている事例が複数件報告されており、その中には死亡に至ったケースもある。ただ、労働安全衛生法の上で必要要件となっているのは、あくまでもホイールやリングなどの飛散防止。爆風被害の防止、あるいは爆風そのものの軽減など、破裂時の爆風については言及されていないのが現状だ。
だが、太田取締役は次のように指摘する。「ホイールやリングが吹き飛び、人体を直撃するというのは確かにイメージしやすい。一方で破裂したときの空気が人体に損傷を与えるというところまではイメージしにくいかもしれません。ですが、実際には爆風を受けた衝撃でケガをされる方、死に至ってしまうケースが多いのです」
破裂時の爆風を防ぐことができないか――タイヤ整備の現場に向け、同社が最初に提案したのが「セーフティバッグ」だった。強靭なコードで補強した布を、特殊な縫製技術によって製品化することに成功したものだ。2009年、業界でいち早く発売し、市場から高い評価を得た。
その後、「セーフティバッグ」で得た開発ノウハウをフィードバックし、各種の爆風防止シートを開発。セーフティケージへの後付けも可能とし、それらを組み合わせることで、高いレベルでの安全対策を実現した。
また、太田取締役は次のように指摘する。「頻繁にタイヤ空気充てん講習が全国で実施されている中で、同業各社からも防風対策ケージが出揃ってきたことから、従来型に替わる、人命により安全な製品の普及へと、われわれ製品供給側の意識もシフトしていくべきときにきている」
その一方で、「セーフティケージにシートをロープでくくりつける作業に手間がかかる」との声があったという。そこで同社は発想を転換。爆風を遮断するのではなく、その威力を軽減させつつ安全な方向へと誘導するという考え方だった。
新製品のブラインド式セーフティケージ「TD-TBi」は、ケージ側面を金属によるブラインド形状として加工したもの。ブラインドは正方形とし、片面に4枚ずつはめ込み、ボルトで締め付ける。正方形のため、爆風の排気方向を、作業場の環境等に合わせて90度単位で任意に変更することが可能だ(出荷時は上方向への排気誘導で組み付け)。ちなみに製品名に付けられた「i」はinduce(=誘導する)に由来すると、太田取締役は説明する。
製品化に至るまで、数多くの爆破試験を実施したそうだ。その結果、爆風の衝撃を受けない安全エリアを1メートルと判定した。また、爆破衝撃を受けても壊れず複数回の使用が可能な耐久性を備えているのも金属製だからこそだ。
ケージ側面からタイヤの状態を確認することができるのはブラインド形状の特徴。タイヤ引き出しユニットを標準装備したほか、任意の側にタイヤを傾けることができる着脱式ローラーユニットをオプションで用意した。
「あったらいいな」、当社の特徴ある製品にはすべて、その要素が含まれています――太田取締役はそのように言う。現場の声にタイムリーに対応しシーズ(自分ができること)をソリューションとして提案するという、同社企画陣営の思想がそこに表れている。