横浜ゴムはSUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR」(ジオランダー)の新商品「ジオランダーM/T G003」を8月より発売する。新商品はオフロードユーザー向けのマッドテレーンタイヤで、泥道や岩場、ダート、砂利などあらゆるオフロード路面での性能を向上させている。5月下旬に愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」で開催された試乗会でその性能を確かめた。
SUVの需要拡大に応える
横浜ゴムは1996年に「ジオランダー」ブランドを立ち上げ、「ジオランダーM/T」を発売した。その後、2004年には「ジオランダーM/T+(プラス)」としてマイナーチェンジを実施。今回の新商品「ジオランダーM/T G003」はパターンやサイドデザインを一新し、フルモデルチェンジとしては実に21年ぶりとなる。
同社はここ数年、「ジオランダー」の商品展開を加速している。SUV用低燃費タイヤ「ジオランダーSUV」(2012年)を発売した後、2015年には中大型SUV向けのハイウェイテレーンタイヤ「ジオランダーH/T G056」を上市。さらに昨年にはオールテレーンタイヤ「ジオランダーA/T G015」を発表している。
積極的な商品投入の背景にはグローバルで進むSUV・ピックアップトラックの需要増がある。国内でも新車販売に占めるSUVの比率は、2011年の5.6%から2016年は11%へと倍増しており、この傾向は今後も続くものと予想されている。
パターンやデザインなど全面的に改良
「ジオランダーM/T G003」ではトレッドパターンからサイドデザイン、構造、コンパウンド、プロファイルまで全面的な見直しを図った。この中で特徴的な技術はオンロードとオフロード性能を両立させた新パターンとアグレッシブなサイドデザイン。
オフロード路面で性能向上の軸となるパターンには、排土性やトラクション性能を高めるグルーブ、硬い土でもエッジ効果を発揮するサイプを採用。また岩場で溝底へのダメージを緩和しつつ、排土性を向上するためのエジェクターも新たに開発した。
タイヤのサイド部は厚く設計するとともに、上部に「アグレッシブサイドブロック」と呼ぶブロックを配置したことで耐カット性を高めた。さらにトレッド面からサイド部にかけて一貫性のあるデザインを採用することで、オフロード感を演出し、性能と見た目も両立させた。
その一方、オフロード性能と背反するオンロード性能にも配慮した。従来品と同等レベルの静粛性や快適性を確保し、市街地を快適に走行したいユーザーの声に応える商品に仕上がっている。
壁のような岩場も登りきる
試乗会は「さなげアドベンチャーフィールド」内に設置された岩盤路や泥ねい地といった本格的なオフロードコースで行われた。
まず、トヨタ「FJクルーザー」に新旧商品を装着し、マッド路面に進入する。旧商品ではトラクションをかけた際にタイヤが空転してしまうシーンでも新商品は泥をしっかりと掻き出し、車体を前方に押し出そうとする強い力が明確に感じられる。
続いてトヨタの並行輸入車「タンドラ」で岩盤路を走行する。ドライバーは各国のオフロードレースでサポート経験が豊富な坂巻勝彦さん。
一般ドライバーの感覚では「こんな急坂を走れるのか?」と怖気づくような勾配路だが、坂巻さんは「グリップがあるので恐怖感がない」と話し、次々に大きな岩を乗り越えていく。
岩の上を走ると、削られた表面が砂となり、タイヤが滑ってしまうため、コンパウンドでグリップさせるのはほぼ不可能だという。「グリップを一度失ったら最後。1輪でもそうなると、あとは下がっていくしかない」という状況でもはタイヤ全体の力でグリップをキープする。
「このタイヤは重力を無視して進む」という言葉通り、崖のような岩場を登りきってしまう。ちなみに「タンドラ」の車重は約3.3トン。
坂巻さんは「ほぼ壁と同じような40度の勾配でも登れるかもしれない。今までは迂回するしかなかったコースもこのタイヤなら走破できる」と高く評価する。
最後に、オンロードでの静粛性や快適性を確認するため、一般道で新商品と従来品を乗り比べてみた。装着車両はトヨタ「ランドクルーザープラド」。従来品自体もマッドテレーンカテゴリーの中では静粛性に定評があったが、新商品でも通常走行ではノイズや乗り心地に大きな差は感じられない。むしろオフロードの性能を大幅に引き上げたにもかかわらず、これだけのオンロード性能を実現した所に新商品のレベルが実証された形だ。
「ジオランダーM/T G003」のターゲット車種はオフロード走行を想定したSUVで、横浜ゴムでは世界各国での販売を計画している。北米やアジアなどで特にニーズが高いが、国内でもドレスアップにこだわるユーザーやカッコ良さやアグレッシブさを求める層に訴求していく。
国内では8月に15~17インチ、20インチの9サイズを投入し、それ以降もサイズを拡大していく予定。