【東洋ゴム】伊丹の新本社ビルを公開 社内の連携と結束へ

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カテゴリー: レポート, 現地

 東洋ゴム工業は5月末に移転した兵庫県伊丹市の新本社ビルをこのほど報道陣に公開した。新本社は同社のタイヤ技術センターと同じ敷地内にあり、2013年に開設した基盤技術センター(兵庫県川西市)へのアクセスにも優れる。本社機能とタイヤの技術開発部門、研究開発機能が同じエリアに集約されたことで意思決定の迅速化を図るとともに、社内の一体感を生み出していくことが期待される。

東洋ゴム新本社
タイヤをイメージした外観

 新本社が所在する伊丹地区は1998年まで同社のタイヤ工場があった。創業当初まで歴史をさかのぼると、同社は1953年に戦争で被災した東洋紡績(現・東洋紡)の工場を借り受け「伊丹工場」を開設。当時の大阪工場や川西工場の設備を移管して1958年には「伊丹総合工場」が完成した。

 その後、1996年に工場に隣接する形で、それまで分散していた技術部門を統合して「タイヤ技術センター」を工場の隣接地に開設。1974年には大型コンピューターを設置し電算センターとしての機能も備えた「伊丹事業所」として運営していた。その後、1995年の阪神淡路大震災を経て1999年には技術センターを残して生産機能を他工場へ移管、約半世紀に及ぶ歴史に幕を閉じた。

 それから約20年、再び伊丹へ本社を構えることになった。その目的について、同社の櫻本保取締役常務執行役員は「機能集中による連携と結束、意思決定の迅速化と企業価値向上を図ること」と話す。その上で、「当社は今年から機能別組織に変更した。生産、販売、技術、コーポレートそれぞれの組織が考え方を共有し、ひとつのチームとなりバランス良く融合してグループの力を発揮していく」と抱負を述べた。

東洋ゴム新本社
社内にはコミュニケーションを生み出す場所を多く設けた

 新本社ビルはタイヤをイメージした円形の外観で6階建ての構造となっている。旧本社は社員の執務エリアが7フロアに分散していたのに対し、新社屋は1~3階に応接室や会議室、食堂、大ホールを配置し、最上階は社長室や社外取締役の専用フロア、執務エリアは4~5階の2フロアに集中させた。

 約300名が同じ空間で働く内部は部門間の壁を取り払い、コミュニケーションを活性化させるための工夫を随所に施している。4階より上は中心部を吹き抜け構造とした「コミュニケーションコア」を呼ばれるスペースを設けたほか、社員が気軽に集まり、立ったままの打ち合わせや簡単なミーティングができるような場所を多く配置した。執務スペースのデスクは各自が背中合わせに座ることで、何かあればすぐに声をかけ合って相談しやすい環境を整備した。

 移転から約1カ月後の7月上旬に従業員を対象に実施したアンケートによると、「メールや電話より席に足を運んでコミュニケーションするようにしている」という意見が約6割に達しており、「部内や関係部門とのコミュニケーションを取りやすくなった」という意見も多く聞かれている。

東洋ゴム新本社
各デスクは背中合わせに配置

 また隣接するタイヤ技術センターとの連携も生まれつつある。これまでは会議を行う場合、大阪本社からは移動に1時間弱を要していたが、新社屋にある会議室や食堂を共有することで「時間や距離だけではなく、同じ場所で働いているという、気持ちの意味でも一体感が出ている。対話が生まれ、それが調和になる」(櫻本常務)。

 “インテグレーション”(融合)をコンセプトに稼働を始めた新社屋。5月29日に実施した式典で、清水隆史社長は本社と技術センターの従業員約600名に向けて、「創業時代のゆかりの地、伊丹に本社を構えたことは第二の創業にも値する大きな転換である。調和・誇り・変革を合言葉に新たな歴史を作っていきたい」と話し、企業価値向上への決意を示した。

 ハード面で環境が整った今後、地域住民との積極的な交流に取り組むほか、長時間労働の削減やダイバーシティの推進などソフト面での対策にも重点を置いていく方針だ。


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